Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleなどの大手クラウド事業者がエンタープライズ市場をすっかり魅了してしまったのに伴い、この数年間でデータのクラウドへ移行が急激に進んだ。Canalysのレポートによれば、世界のクラウドインフラサービス市場は、2019年第1四半期に前年同期比で42%拡大したという。
Forrester Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストAndrew Bartels氏は、「通常、われわれや顧客が『クラウド』という言葉を使うときには、3つの異なる次元、あるいは方向性が念頭にある」と話す。
Bartels氏によれば、その3つとは、オンプレミスアプリケーションのSaaSモデルやシングルホストアプリケーションへの置き換え、クラウドのミドルウェア、そしてクラウドプロバイダーからコンピューティング資源やストレージ資源にアクセスできるクラウドインフラだ。
ただし、パブリッククラウドサービスはあらゆる業界に適した万能のソリューションではない。そこに、特定の業界に特化したクラウドソリューションが台頭する余地が生まれている。「インダストリークラウド」とも呼ばれるそれらの特定業界向けのクラウドソリューションは、近年急成長を遂げている。
その理由は単純だ。Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデント兼最上級アナリストのEd Anderson氏によれば、特定業界のために用意されたクラウドアプリケーションが、オンプレミスのソリューションや汎用のクラウドサービスに比べ、安価で効果的なためだという。
Anderson氏は、「(クラウドの)売りはデータセンターの整理統合と効率化だった」と述べ、次のように続けた。「その焦点はアプリケーションのクラウドへの移行にあった。クラウドサービスは利用した分だけ料金を支払えばよく、すべてを自前で用意しようとするよりも安価だ。自前でアプリケーションを動かす場合にかかる費用の一部は、アプリケーションを実行する物理環境の費用だ。クラウドを導入すれば、それらのシステムの管理をクラウド事業者にアウトソーシングできる。また、技術の進歩に取り残されるのを避け、最新の機能を利用できるようにすることが主眼の場合もある。これらの要因が、クラウドへの移行を後押ししている」
Bartels氏はさらに、多くの業界ではインダストリークラウドの利用は不可避であり、特に古くからサービスを提供している既存ベンダーが優勢な業界ではその傾向が強いと付け加えている。古くからあるベンダーの多くは、顧客に対して、ビジネステクノロジー環境の変化についていくために、古いシステムからよりクラウド的なシステムに移行することを勧めている。
この記事では、インダストリークラウドソリューションに対する投資額が大きいと考えられる5つの業界を紹介する。