IDC Japanは8月22日、2018年の国内ERM(Enterprise Resource Management)市場売上額シェアを発表した。全体のシェア首位はSAP、次いで2位に富士通、3位はオービックと続いたという。
売上額は前年比3.0%増の2140億9700万円。2019年10月の消費税増税と訪日外国人(インバウンド)で活況を呈する流通、小売業界の需要増、成長率が前年比32.0%増となったパブリッククラウドの成長などが影響したが、圧力が高まるデジタルトランスフォーメーション(DX)変革の直接的な影響は見られなかったとしている。
従業員規模別の成長率は企業規模と反比例して向上し、1000人以上の大企業で1.7%増、100~999人の中堅企業で3.2%増、100人未満の中小企業では7.1%増。
シェア別の首位は大企業ではSAP、中堅企業はオービック、中小企業がオービックビジネスコンサルタント。前年比成長率は大企業はオービック、中堅企業がオラクル、中小企業がオービックとなったという。
パブリッククラウドの影響を最も受けたのは中小企業で、新興ベンダーによる競争が激化したとしている。
ERMは一般的にはERP(統合基幹業務システム)と呼ばれている。IDCでは財務、人事管理、給与計算、販売管理、購買管理、企業業績管理(Enterprise Performance Management:EPM)、企業資産管理(Enterprise Asset Management:EAM)、プロジェクトポートフォリオ管理(Project and Portfolio Management:PPM)の8種類を定義している。
ヒト、モノ、カネといった企業の“経営資源データの管理”から、リアルタイム意思決定で経営を支えるための“インサイトをデータ活用から導き出す総合デジタルツール”へと価値の変わり目にあるという。
DX実現シナリオの1つとして期待されるが、ユーザー企業のIT投資はセキュリティ対策や機械学習、人工知能(AI)を優先する傾向があるという。基幹業務システムへの投資優先度が低く、ユーザー企業のIT投資が最適配置されず、部門間で予算を取り合う「DXデッドロック」を引き起こす可能性があるとしている。
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーを務める飯坂暢子氏は「ユーザー企業はDXの実現に向けて同時期に複数のシナリオを実行する必要がある。ITサプライヤーはユーザー企業がビジネスに業務プロセスを適用させる変革をリードし、イノベーションアクセラレーターである機械学習、AIなどによる業務自動化の導入シナリオに必要なサポート、人材不足解消のための早急なエコシステム構築が求められる」とコメントしている。
国内ERM市場ベンダー別 売上額シェア実績、2018年(出典:IDC Japan)