日本マイクロソフトは8月27日、「MaaS(Mobility-as-a-Services)」関連企業に対して「MaaSリファレンスアーキテクチャー(参照構造)」の提供に代表される支援施策の提供を開始すると発表した。
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これは、8月20日に開催した2020年度の経営方針でも触れていたもの。各業種に対するリファレンスアーキテクチャーの提供が好評だとしており、今回は同社の注力分野の一つとなる自動車産業のMaaSに焦点を当てる。同社執行役員 常務 エンタープライズ事業本部長のHennie Loubser氏は内閣府が提唱するSociety 5.0の実現には、「共通規格が必要だが、われわれはIDやデータの交換といった分野で長けている。(SAPおよびAdobeとの協業を通じて2018年9月に発表したデータのサイロ化を取り除き、データ連携から洞察の取得を容易にする)Open Data Initiativeなど考えも先んじている」と述べ、MaaSを通じてプラットフォーム企業としての存在感を今後も示していくと強調した。
日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部長のHennie Loubser氏
現在、国土交通省は「日本版MaaS」の実現に向けた思案を重ねている。都市と地方、高齢者や障害者などを含む全ての地域と全ての人々が新たなサービスを利用できる仕組み作りを念頭に、他業種とのサービス連携によるサービスの高度化を想定している。
日本マイクロソフトは、未来投資会議構造改革徹底推進会合が定義したMaaSの実装段階「レベル0:統合なし」「レベル1:情報の統合」「レベル2:予約・決済の統合」「レベル3:サービス提供の統合」「レベル4:政策の統合」を示しつつ、「現在はレベル0。早期にレベル2、3、4と推し進めるには、MaaS参入事業者が抱える人材育成と技術、2つの課題を解決しなければならない」(エンタープライズ事業本部 運輸・サービス営業統括本部 インダストリーエグゼクティブ Maas&Smart Buildingソリューション本部 専任部長の清水宏之氏)という。
日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 運輸・サービス営業統括本部 インダストリーエグゼクティブ Maas&Smart Buildingソリューション本部 専任部長の清水宏之氏
日本マイクロソフトは、人材育成に関する課題を解決するため、「MaaS新規ビジネス開発支援」「MaaS技術者育成プログラム」「パートナーエコシステムの構築支援」の技術にまつわる課題解決策として「MaaSリファレンスアーキテクチャー」を提供する。2019年1月に流通向け、6月に製造、金融、流通、ヘルスケア向けリファレンスアーキテクチャーの提供を発表しており、今回は同種の内容をMaaSに適合させた形だ。
具体的には前述したMaaSの実装段階によって異なる構成を示す「機能マップ」、各種サービスを実現するために必要な機能をMicrosoft Azureに照らし合わせた「アーキテクチャーマップ」、PowerAppsとMicrosoft Azureによる実装や予定表(Office 365)との連携、オープンソースの経路検索エンジン「Open Trip Planner」を用いた経路検索、Bing Mapと連携したGIS(地理情報システム)情報取得などのコードを含む。「時差ビズ、テレワークで労働者の生産性向上を狙う上で課題となるのが移動の柔軟さ。公共交通移動を含めた改善が、MaaSを実現する未来の1つ」(清水氏)と、サンプルコードの構成を説明した。
9月に開始するMaaS技術者育成プログラムや、AI(人工知能)人材育成プログラム「Flags!」と連携してアイデアソンやハッカソンを実施し、技術支援やパートナーマッチングなど多角的な支援を行う新規ビジネス開発の支援、既存のパートナープログラム「MPN for Industry(Microsoft Partner Network for Industry)」の範囲にMaaSを追加し、新規ビジネス創生につながるエコシステムの拡充を図る。
一連の取り組みは、一般企業や公共団体、地方自治体で活用したいところが対象であるものの、制限は設けていない」という。日本マイクロソフトは同ソリューションの導入で、地方自治体や不動産開発などMaaSプラットフォーマーと想定される企業の平均値を元に、新規サービス開発期間は5割、実装方式設計コストは7割、将来的な運用コストは5割の減少を見込んでいる。
MaaS Tech Japan 代表取締役CEOの日高洋祐氏
MaaSリファレンスアーキテクチャー策定パートナーに名を連ねるMaaS Tech Japan 代表取締役CEO(最高経営責任者)の日高洋祐氏は、世界各国でMaaSへの取り組みが進んでいるが、導入条件や運用シナリオは国家や地域で大きく異なると指摘。「日本では需給のバランスや、地方の人口減少に伴う公共交通機関の課題を抱えているため、MaaSが生活基盤を維持する存在にならなければならない」という。
MaaS導入の一案として、「『早い安い近い』で経路を検索せず、混雑時は急いでいない人に一定のインセンティブ(報酬)を提供して最適化すれば、(MaaSは)都市開発に方向に転化し、場所・都市の再定義、都市単位での最適化システムにつながっていく」(日高氏)と予見した。