本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズのDave West代表執行役員社長と、日本HPの岡隆史 代表取締役 社長執行役員の発言を紹介する。
「2020年に向けた働き方改革をその後も“継続”することが重要だ」
(シスコシステムズ Dave West代表執行役員社長)
シスコシステムズのDave West代表執行役員社長
シスコシステムズが先頃、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてテレワークの普及を支援するため、クラウドベースのウェブ会議サービス「Cisco Webex Meetings」を利用するためのライセンスを、ユーザー企業が導入しやすい料金で提供する特別プランを発表した。冒頭の発言はその発表会見で説明に立ったDave West氏が、働き方改革は「継続」して取り組むことが重要であることを強調したものである。
特別プランでは、希望するユーザー企業に3カ月無償のトライアルを提供。その後、東京五輪・パラリンピック開催期間を含む初年度は、従業員数の15%の料金でCisco Webex Meetingsを全社で利用できるようにした。また、トライアル期間を含め、導入や活用を促進するための無料オンライントレーニングなども併せて提供する。(関連記事)
東京五輪開催期間中の交通混雑緩和の方策として、テレワークへの注目が高まる一方、導入企業の割合は総務省の「平成30年通信利用動向調査」によると19.1%にとどまるなど、日本でのテレワーク普及はまだ緒についたばかりというのが実状だ。この特別プランを通じ、シスコはより多くのユーザー企業が、五輪開催までに容易にテレワークを導入しやすい環境を整えられるよう支援する構えだ。
さらに、大会以後も場所にとらわれない柔軟なワークスタイルの定着により、企業の生産性、従業員モチベーションの向上などの効果が生まれることを期待している。
会見では写真にあるようなチラシも配布された。上段の見出しには「もう満員電車で疲弊するのやめませんか?」とあり、下へと見ていくと「東京2020オリンピック・パラリンピックで都内の交通網大混乱は必至!」、そして「今から本気で働き方を変えてみませんか?」、一番下で「オフィスへ通勤しなくても、通常通りの業務ができる環境を作りませんか?」と問いかけている。
シスコが作成した「働き方改革」を推奨するチラシ(出典:シスコの資料)
この問いかけに対応するように、チラシの裏にはCisco Webex Meetingsが紹介されている。その意味では、このチラシが今回のシスコの会見でのメッセージを凝縮しているように感じた。
さらに、筆者が最も印象深かったのは、West氏が「働き方改革は2020年以降も継続して取り組んでいかなければならない。これで終わりということがない取り組みであるのをしっかりと認識しておく必要がある」と、「継続」という言葉を幾度も使っていたことだ。そこには、働き方改革を2020年に向けたブームに終わらせてはいけない、との強い危機感があるようにも見て取れた。