“エッジAI”の普及浸透を目指してスピンオフ--エッジマトリクスが事業戦略を説明

藤本和彦 (編集部)

2019-08-30 14:15

 「エッジAI事業」を展開するEDGEMATRIXは8月29日、事業戦略説明会を開催した。併せて、NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルの3社から9億円の資金を調達したことを明らかにした。

 EDGEMATRIXは、ビッグデータ向けストレージを提供するCloudianからスピンオフした新興企業で、もともと同社日本法人で進めていたAI事業を引き継ぐ形になる。データの生成現場である“エッジ”で人工知能(AI)処理を活用する「エッジAI」を事業の中核とする。

EDGEMATRIXが目指す世界
EDGEMATRIXが目指す世界

 エッジAIは、(1)コストやエリアの制約からクラウド側のAIを利用することが難しい、(2)AIによる制御において通信やクラウド処理における遅延の影響を避けたい、(3)AIで活用するデータがセンシティブなためクラウドで処理・保管したくない、(4)機密性が高い環境でありAI処理するデータを外部に出せない――といった場面における課題を解決する。

 代表取締役副社長の本橋信也氏は会見で、「データの生成現場(EDGE:エッジ)においてAIを実用化し、統合管理・収益化する基盤(MATRIX:マトリクス)という意味を込めて、EDGEMATRIX(エッジマトリクス)という社名にした」と話す。

 その上で、現在のAI活用の課題として「大容量データがネットワークやクラウドに集中すると利便性が大きく低下してしまう。クラウドだけではAIの実用化は難しいのが現状だ。これに対し、EDGEMATRIXは、現場でAI処理して解決を図り、さらに現場におけるAI処理設備の設置取付や運用管理が簡単な仕組みを提供する」と強調した。

 NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルの3社から調達した資金を使って、「エッジAIデバイス事業」「エッジAIプラットフォーム事業」「エッジAIソリューション事業」の展開を本格化する。

 エッジAIデバイス事業では、エッジ型でリアルタイムにAI処理を実行する小型装置「Edge AI Box」を開発・提供する。カメラと分離型になっているのが特徴で、既設カメラの利用が可能となっている。解像度や望遠、赤外線、高感度など、カメラのニーズに応じて柔軟にカメラを組み合わせられる。

 Edge AI Boxのラインアップは、高い費用対効果の「Standard」、性能優先の「Advance」(2019年第4四半期発売予定)、低価格の「Light」(年内投入予定)を用意する。Standardでは、防水・防塵・落雷などの対策を講じたOutdoorモデルも提供する。Advanceでは、5G対応モデルのサンプル提供を2020年第2四半期に計画している。

Edge AI Boxのラインアップ
Edge AI Boxのラインアップ
Edge AI Boxの実機
Edge AI Boxの実機

 次にエッジAIプラットフォーム事業は、エッジAIをエンドツーエンドで統合管理するプラットフォームを提供する。Edge AI Boxの設置場所を表示して状態管理する「Map View」、現場の映像をAIで処理すると同時に表示する「Edge View」、AIアプリを配信・管理、登録・販売する「マーケットプレイス」などの機能を提供する。

 マーケットプレイスでは、顔認証や行動分析、交通量計測、渋滞監視、在庫監視、災害監視など、汎用性が高くスケールするアプリケーションを提供する。また、カスタムアプリの開発・提供などにも対応する。

 プラットフォームは現在開発を進めており、2020年1月以降に試験サービスを、4月以降に商用サービスを開始する予定となっている。

 3つ目のエッジAIソリューション事業は、エッジAIを実用化するためのソリューションを提供する。同社はこれまで、車種判別による屋外広告など数多くのAIソリューションを手掛け、実証実験(PoC)段階から商用段階へ移行する際に直面する多くの課題を解決してきた。これらの経験や知見をもとに、実用化を視野に入れたエッジAIの開発を支援する。

(左から)清水建設 執行役員の関口猛氏、EDGEMATRIX 代表取締役副社長の本橋信也氏、同 代表取締役社長の太田洋氏、NTTドコモ 執行役員の谷直樹氏、Cloudian Holdings 最高経営責任者(CEO)のMichael Tso氏
(左から)清水建設 執行役員の関口猛氏、EDGEMATRIX 代表取締役副社長の本橋信也氏、同 代表取締役社長の太田洋氏、NTTドコモ 執行役員の谷直樹氏、Cloudian Holdings 最高経営責任者(CEO)のMichael Tso氏

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