NTTアドバンステクノロジは9月3日、同社のロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツール「WinActor」のクラウドサービス版となる「WinActor Cast on Call」の提供を開始した。同サービスは従量課金制により導入しやすさを狙っているが、その背後には、WinActorにより全社横断デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するという狙いがある。
WinActor Cast on Callでは、あらかじめ準備されたシナリオをユーザーが状況に合わせて選択してクラウドからダウンロードして利用する。シナリオとしては、さまざまな企業で行われている共通的な業務に対応するものが用意されているという。
このような共通的な業務というようなものが存在するかについては、いろいろな企業と半年以上にわたり実証実験したと同社取締役AIロボティクス事業本部長の高木康志氏は、8月28日に開催された記者説明会で述べた。

高木康志氏
自治体や企業の業務において「共通的なシナリオが使えるということが確認できた」ことから、WinActor Cast on Callの提供を開始したと高木氏は説明する。
料金はシナリオごとに課金されることから、中小企業でも利用しやすくなっているという(ただし、利用申込時に年間サービス利用料が別途必要)。利用としては、季節限定のような業務を主に想定していると高木氏。年間通じて発生する業務ならば、従来型ライセンスの方が向いているという。
従来型ライセンスではシナリオを自由に作成できる反面、企業によっては、そのような作業のためのコストや時間がない場合もあるという。そのような企業にもWinActor利用のハードルが下がることになる。

WinActor Cast on Call
WinActorを中心とした全社横断DX
今回、従量課金制のクラウド版が投入されたWinActorだが、日本企業において全社横断デジタDXを実現する鍵となるという。

中川拓也氏
WinActorを販売するNTTデータの社会基盤ソリューション事業本部ソーシャルイノベーション事業部デジタルソリューション統括部RPAソリューション担当課長である中川拓也氏は、日本では全社横断DXへとつながるビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)が約20年進んでいないと指摘した。
同氏によると、欧米型の業務設計はトップダウンで、事業部門や業務部門といった現場は割り当てられたことを実行するという。そのため、経営部門にコンサルタントが入ってBPRを実施する場合も、トップダウンという同じ流れで進む。それに対して、日本型の業務設計はボトムアップで、現場が強く、日々改善を実行しているという文化がある。そのため、トップダウンでBPRを実施するとの指示があっても、現場とぶつかってしまい、円滑に進まないという。
日本でDXをやることを考えた場合、日本にあったやり方があると中川氏。現場からいったんボトムアップでDXを進め、最終的にトップから全社展開するというやり方を紹介し、WinActorならそれが実現可能だとした。
具体的には、次のような流れになる。WinActorを導入した場合、まず、現場の担当者が同ツールを認知することで、業務上の改善点が見えてくる。そして、導入効果が実際に出てくると、利用が拡大される。そして、最終的には全社で自動化をしようということになる。この段階では、推進部門やIT部門が旗振り役となり、現場と一体になって進めていく。