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第2回:アンメットニーズでビジネスを変革--AIの進化で改めて注目すべきVoC活用

照井栄介、里泰志、樋口裕司 (クニエ)

2019-09-05 07:00

はじめに

 一昔前、ヘルスケア業界を中心に「アンメットニーズ」という言葉が注目された。アンメットニーズとは、患者(顧客)の声にならない声や満たされないニーズ(潜在ニーズ)のことである。アンメットニーズを発掘することは、ヘルスケア業界に限らず他業界においても積年の課題であるが、遂に発掘する手法が出来つつある。

 それは、人工知能(AI)技術の進歩により顧客との会話内容をテキスト化できるようになったことが大きい。それによって、これまで見落としていた顧客の声(Voice of Customer:VoC)を収集し、分析することが可能となったのである。また、近年のSNSの普及、独自の決済手段の構築などにより、“顧客を知る”ための情報はあふれている。すなわち、“アンメットニーズを発掘する”ための手段は進化を遂げているのである。

 今回は、そのような状況において、先進的な企業がVoCを用いてどのように顧客を知り、業務へ適用しようとしているのか、また業務適用に至るまでの課題や解決策を考察する。

なぜ今VoCが注目されるのか

 2000年当初から、一部の製造業ではVoCを商品改善に生かす取り組みが実践され、VoCは、コンタクトセンターがトップライン(売り上げ)に貢献するための資産という認識が広まった。それ以降、多くの企業がVoCの収集・分析・発信にチャレンジしてきた。 これまでのVoCの取り組みでは、多くの問い合わせの中から、一部の顧客の問い合わせ内容をオペレーターが記録し、それを製造部門やマーケティング部門と共有し、商品改善や施策改善に役立ててきた。

 もちろん、商品不具合などファクトベースのVoCは、製造部門と連携することで商品改善の取り組みに直結するため十分に価値がある。ただ、VoCの価値はそこにとどまらない。にもかかわらず、VoCの収集・分析を商品開発や顧客体験の設計などのプロセスに取り入れている企業はいまだ少なく、マイニングツールの導入などIT投資をしている企業は少数である。

 では、なぜ今VoCが改めて注目されているのか。それは、商品開発、生産計画、顧客体験の設計など、あらゆる企業プロセスを顧客の声に基づいて実施しようという経営に各社がシフトしてきているためである。その背景には、顧客の真のニーズは何なのか、それを求めている顧客はどのような購買特性があるのかを発掘し、企業プロセスに組み込むことが重要な差別化要素になるためである。

 アンメットニーズは、マーケティング部門が行う従来のリサーチ手法や外部機関の調査だけでは発掘が難しく、行き詰まる企業が多かった。しかし現在、VoCによるアンメットニーズの発掘を後押しする3つの事象がある。

  1. 「音声認識&音声テキスト化機能」といったAIの進歩
    これまで、コンタクトセンターで収集されるVoCは、「オペレーターが記録した人力に依存した一部の内容」であったが、音声認識とそのテキスト化の精度が向上したことで、顧客との対話内容が全てテキスト化され、VoCの量が大幅に増加。価値あるVoCを多く収集することが可能となった。
  2. 「“個客”体験」というコンセプトの普及とその設計の推進
    ある企業では、「他人に購入しているところを見られたくない」というVoCをもとに、店舗であまり売れない商品をECサイトなどで販売したところ、売り上げが飛躍的に伸びた、というケースがある。すなわち、顧客のニーズを商品開発だけにとどまらず、顧客体験の設計プロセスに反映することが競争優位になると注目されている。その結果、顧客行動のあらゆる場面で、VoCを収集する仕掛けが準備されつつある
  3. SNSの普及
    企業が能動的にVoCを収集できるようになったことで、顧客だけでなく消費者の声も広く収集可能となった。また、これまでのVoCは問い合わせのあった一部の顧客の声だけだったが、SNSの普及によりこれまで収集できなかった顧客層の声も収集できるようになり、VoCの価値が向上したといえる。

 上述のことから、企業はVoCの重要性を再認識し、VoCの収集・分析に対する投資が盛んになりつつある。つまり、VoCは“高度化”の局面を迎えたといえる。

図1:VoCがアンメットニーズの発掘を後押しする3つの事象
図1:VoCがアンメットニーズの発掘を後押しする3つの事象

コンタクトセンターに求められる変革とは

 コンタクトセンターをコストセンターと位置付けている企業は多い。そのため、低コストで運用するための業務効率化は進んできた。しかし、日に数百、数千の顧客と会話し、VoCを収集することができるコンタクトセンターではアンメットニーズを発掘できる可能性が高いはずである。そのため、現在、コンタクトセンターの役割を見直し、VoCを収集・分析・発信する部門へと変化させる動きがある。

 先進的な企業では、クレーム処理部門から顧客戦略や商品戦略に深く関与するマーケティング部門へと変革を遂げようと試行している。つまり、いかに良質なVoCを収集し、価値あるインサイトを導出するかがコンタクトセンター部門のミッションになりつつあるのだ。

 では、具体的にどのような変革がコンタクトセンター部門に必要なのか。

  • 全社横断のVOC主管部門となる
    • 関連部門とVoC活用に向けた推進体制を構築する。VoCは社内への展開がゴールではなく関連部門の意思決定に寄与することがゴールと考える
    • 顧客接点という意味では、直接顧客と接しているのは営業部門もあるが、「営業部門は顧客関係管理システム(CRM)に顧客情報を登録しきれない」という、従来の壁にぶち当たる。そのため、音声認識とそのテキスト化の精度が向上したコンタクトセンター部門においては、全社横断のVoC主管部門になるチャンスがある
  • VoC収集・分析~発信のためのプラットフォームと分析・活用サイクルの構築
    • マーケティング・営業部門が保持している顧客情報(デモグラフィック、オンライン/オフラインでの販売実績、ウェブ行動履歴、施策応募履歴など)とVoCを組み合わせることで、アンメットニーズの発掘につなげる
    • 音声認識&音声テキスト化のAIソリューションを導入し、生のVoCを分析できる環境を構築する。先進的な企業では、テキスト化された会話内容をマイニングし、ビジネスインテリジェンス(BI)による可視化・統計分析するプラットフォームを構築しつつある
    • ボットやチャットといったテキストチャネルからVoCを幅広く収集する
    • SNSの情報を能動的に収集する
図2:コンタクトセンター部門が全社横断のVoC活用を推進する
図2:コンタクトセンター部門が全社横断のVoC活用を推進する

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