また、顧客サービス分野で30年の経験を有しているバイスプレジデントに対して、「低下しつつある顧客満足度を向上できる」と宣言するようなことも避けなければならない。あなたが至った結論に向かって急ぐ前に、相手の役割を尊重した対話を始めてほしい。これは「顧客満足度に重点的に取り組みたいのでしょうか?」といった簡単な質問でも構わない。経験豊富な人物の意見よりも、AIが導き出した数値の方が優れているという態度を見せた瞬間に、テクノロジー変革は失敗への道へと突き進んでいく。そうではなく、AIによって得られた洞察を検討や議論の機会として提示するようにしてほしい。
#5:説明可能なAIは、正確なAIと同程度にまで重要となる
AIがもたらす脅威には、「ブラックボックス」だという不可解さに端を発しているものも含まれている。このため、機械が導き出した、何かが起こっている理由と、得られた予測が重要となる理由について、自然言語で説明できるようなテクノロジーの採用が重要となる。AIは数値を予測できるかもしれないが、その数値だけでは役に立たない。業務ユーザーにとって役に立つものとなるには、その値がモデルから導き出された理由を理解させてくれる自然言語での説明が必要なのだ。
これは業務部門の人たちだけの話ではない。データサイエンティストやコンプライアンスの専門家といった他のテクノロジストも、予測をもたらしたモデルの行動原則について、彼ら自身の言葉で説明してほしいと考えている。こういった透明性により、モデルを検証できるようになるとともに、信頼を醸成するための最善の道が開かれる。
#6:データの海に溺れるなかれ
AIの導入に反発する主張で最も多いのは、「われわれはそんなデータを有していない」に始まり、「われわれのデータはメチャクチャだ」に終わる、データに関する誤解だ。これはビッグデータという誇大広告がもたらした結果であり、そのような主張は間違っていると言える。ディープデータという、特定のユースケースに対する適切なデータのみを必要とするという進歩的な考え方によって、そういった誤解から解き放たれるはずだ。またこれは、組織がただちに行動に取りかかれるということを意味している。考えてみてほしい。顧客の減少に対処しようとする際に人事部門のデータを含んだデータレイクが必要になるだろうか?こうした問題に関する価値ある洞察を導き出すには、サービス情報と顧客の履歴情報、注文履歴があれば十分な場合も多いはずだ。これはデータが完全に出そろうのを待たなくても済むようにし、プロジェクトの管理と遂行を可能にする方法なのだ。