RPA導入後、職員からは、「今までは、1つずつ入力フォームを開いて、入力して、更新しての繰り返しで、作業時間が長かったり、間違いが多かったりした」「事務処理が一部自動化できるので、電話対応や窓口対応などリアルタイムな業務に割ける時間が増えた」などの声が上がっているという。
また、自治体の業務では紙資料がまだまだ必要なため、同市でもその対応が課題だった。そのため、人工知能(AI)を活用した光学文字認識(OCR)であるAI OCRの効果検証も始めているという。
RPA導入のポイント
つくば市で効果を上げているRPAだが、三輪氏は導入のポイントを3つ紹介した。導入しやすい部署からのスタート、イメージしやすい内部研修、原則的に担当課によるシナリオ作成と管理だ。
同市で2018年度にRPAを導入したのは、通常利用で納税課や市民税課など5課、一時利用で人事課や教育指導課などの4課だった。このうち納税課では当初、人手不足などから積極的ではなかったが、効果を実際に見ることで変わっていったという。
2019年度には国民健康保険課や医療年金課など10課が導入を検討しているが、三輪氏によると、ある部署で成功事例が得られると、「あの人たちがこれだけラクしているなら、ウチだってこれができるのでは」と考えて導入する部署が増えてくるという。「一気に全庁導入が一番良いのかもしれないが、なかなか難しい部分がある。スモールスタートで少しずつ始めていくのがいい」との考えを三輪氏は示した。
そのため、導入部署選びに際しては、インパクトより、まずは成功事例が優先と三輪氏は述べる。導入意欲の高い部署を選定して成功事例を作り、それを足がかりにインパクトの大きな部署に「営業」をかけ、全体に広げるという。
研修については、ワークショップを内部講師で実施。三輪氏は研修のポイントとして、「テーマはいつも使っているシステムに限ると思う」と語る。チュートリアルにある、実際の作業と無関係なシステムで研修をしても学習効果が得られないという。そのため、つくば市の場合、日常使っている税務関連のシステムなどを題材としている。
その際、工夫している点として、同部署の2人1組で操作してもらうことを三輪氏は挙げる。分からないことがあっても、解決策をすぐに教えず、2人に考えさせることが大事だという。
「(WinActorの場合)考えるとある程度分かるシステムになっている。ツールを見ていくと、相談しなくても基本的なことを動かせるように設計されている印象を受けるので、まずは、2人で考えてもらって、本当に困ったときだけ教える」(三輪氏)
その結果、研修が基本的な内容でしかなく、時間的に半日程度であっても、2人でその後に自分たちのシステムを操作することで、複雑なシナリオでも作れるようになるという。
自治体間の連携
シナリオを自分たちで組むことに関連して、自治体間の連携についても三輪氏は述べた。「自治体間で争っていてもしかたがないので、共闘していくことが大事」(三輪氏)
RPAがどのような場面で活用できるかはアイデア勝負なので、1つの自治体の担当者のアイデアには限界があるという。担当者が税務に詳しければ、それに関連した活用法を考えられるが、道路や環境に関した業務となると難しいこともある。そのような場合でも、他の自治体で道路や環境に関した業務に詳しいRPA担当者がいれば、そこから情報を入手してRPAの活用が可能となる。
「1741自治体、システムなどに当然違いはあるが、やっていることはほぼ同じ。アイデアを共有することで、活動範囲を広げていければと思っている」(三輪氏)
「世界のあしたが見えるまち」というスローガンのつくば市は、科学技術都市ということで、課題解決のモデルを作り、そのモデルを広げていきたいという考えがあるという。RPAの活用についても、「つくば市のやり方が他の自治体に役立つのであれば、非常にありがたい」と三輪氏は述べる。