本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回はITに関連する気になる動きとして、工作機械業界向け新サービスの実現に向けた協業について取り上げたい。
ファナック、富士通、NTT Comが新サービスで協業
工作機械制御装置メーカーのファナック(山梨県忍野村)と富士通、NTTコミュニケ―ションズ(NTT Com)の3社は先頃、「デジタルユーティリティクラウド」構想を実現するサービスを共同開発することを発表した。
デジタルユーティリティクラウドは、工作機械業界全体で重複している社内業務の効率化および顧客サービスの高度化を目指し、デジタル革新を加速させる構想である。その実現のため、3社は業界各社で共通利用できるクラウドサービスの開発に取り組み、デファクトスタンダードを目指す構えだ。
新たなサービスは、工作機械の稼動状況などの設備データ、モバイルデバイスなどで収集される作業ログなどの人的データ、そしてマニュアルや仕様書などの静的データをセキュリティ基盤で管理し、安心、安全に利用できる仕組みを提供するものだ。
集約されたデータを人工知能(AI)エンジンによってさまざまな目的に合わせて分析することで、新サービスを利用する工作機械業界各社が、社内業務におけるコスト、開発リソース低減や顧客サービス高度化に活用できるようになる。これにより、注力すべき差別化領域へ予算や開発リソースを集中することが可能になるという。
また、工作機械業界各社やITベンダーが開発したアプリケーションなどを工作機械業界各社の顧客向けに販売するためのストア機能も提供する予定。新サービスは、工作機械業界のエコシステムとして、工作機械業界各社やその顧客に幅広く利用されることが期待できるとしている。
図1:「デジタルユーティリティクラウド」のイメージ(出典:ファナック、富士通、NTTコミュニケ―ションズ)
3社それぞれの役割としては、ファナックは工作機械業界の立場から、デジタルユーティリティクラウドに必要となる機能を企画するとともに、エッジレイヤーを担うソリューションである「FIELD system」の開発を通じて得た知見を生かし、エッジレイヤーに必要な機能を担当する。
富士通は、ものづくりのさまざまな情報をつなげるデジタルプレイス「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA(コルミナ)」の開発を通じて得た知見を生かし、アプリケーションレイヤーを担当。NTT Comは、ネットワーク、クラウド、セキュリティなどのサービス提供を通じて得た知見を生かし、セキュアなデータ利活用を実現するためのICT基盤やセキュリティ機能を担当する。
新サービスは2020年4月から順次提供を開始する予定。さらに将来的な合弁会社の設立も視野に、3社でデジタルユーティリティクラウドを推進していくとしている。