Oracle OpenWorld

オラクルのSaaSはインフラに強み--新たなユーザー体験も提供

藤本和彦 (編集部)

2019-09-25 07:00

 米サンフランシスコで9月16~19日にかけて開催された「Oracle OpenWorld(OOW) 2019」では、自律型OS「Oracle Autonomous Linux」の発表やVMwareとの提携など、IaaS/PaaS関連の話題に注目が集まったが、業務アプリケーション群を構成するSaaS領域に関する最新の取り組みも数多く紹介された。

アプリケーション製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのSteve Miranda氏
アプリケーション製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのSteve Miranda氏

 同社SaaSの特徴について、アプリケーション製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのSteve Miranda氏は、「Most Complete」「Best Technology」「Fastest Innovation」「Modern UX」というキーワードで説明する。

 Oracleのアプリケーション群は、統合基幹業務システム(ERP)、サプライチェーン管理(SCM)、人材管理(HCM)、顧客体験(CX)、企業業績管理(EPM)といった一連の業務プロセスをカバーし、製品スイートとしての守備範囲の広さをアピールポイントとしてきた。

 今回のOOWでは、そこから一歩踏み込んで、データドリブンというメッセージが強く打ち出されていた。SaaS上に蓄積されたトランザクションデータや、それに関連するビジネスデータ、サードパーティーデータなどを掛け合わせ、より良いソリューションを提供しようというものだ。

Most Completeの説明
Most Completeの説明

 それに関連して発表されたのが「Oracle Analytics for Applications」だ。
これは、同社SaaS向けのデータ分析基盤で、SaaSに蓄積したデータと外部から集めたデータなどをリアルタイムに取り込んで、組み合わせて分析・活用できるようにする。

 「Oracle Cloud Infrastructutre」と「Oracle Autonomous Data Warehouse(ADW)」をシステム基盤とし、外部でデータウェアハウスやデータレイクを構築・運用することなく、フルマネージドのデータ管理基盤をOracle Cloud上に構築できる。

 まずはERP向けに提供を始め、SCM、HCM、CXなどのアプリケーションにも対応していく。

Oracle Analytics for Applicationsのスライド
Oracle Analytics for Applicationsのスライド

 Best Technologyという観点では、同社が「Generation 2(Gen 2)」と呼ぶクラウド基盤の存在がある。エンタープライズで必要とされるワークロードをセキュアかつスケーラブルに実行するため再設計されたもので、同社のSaaSはGen 2で稼働している。今回のOOWでも、Autonomous LinuxやAutonomous Databaseに関するさまざまな発表がなされており、それらのイノベーションをSaaSを通じて享受していけるという意味合いが込められている。

 最高技術責任者のLarry Ellison氏は、Oracleについて「クラウドアプリとクラウドインフラをビジネスに持つ唯一の企業」とアピールする。

OracleのSaaSを構成するBest Technology
OracleのSaaSを構成するBest Technology

 Oracleは、人工知能(AI)/機械学習(ML)をSaaSへ組み込むことに力を入れている。製品の機能のようにAI/MLを活用していけるようにするのがビジョンで、「Data」「Insights」「Prioritization」「Recommendations」という4つのステップでアプローチする。

 企業の内外にある幅広いデータからAI/MLのエンジンを使ってインサイトを導き出し、顧客の課題に照らし合わせて優先順位を付けて、レコメンドするという流れになる。 Miranda氏は「業務アプリにおいて最終判断をする意思決定者は人間」だと話す。人間の意思決定のために必要な情報の整理や加工についてはAI/MLを使って自動化を進め、業務の効率化や高度化を支援していく意向だ。

Fastest Innovationを示すAIのアプローチ
Fastest Innovationを示すAIのアプローチ

 Oracleと言えば、赤を基調としたデザインが長年採用されてきたが、全体的に落ち着いたカラーリングに大きく切り替わろうとしている。「Project Redwood」と呼ばれるユーザーエクスペリエンス(UX)の刷新プロジェクトで、アプリのユーザーインタフェース(UI)などにも順次導入されていく予定となっている。

 例えば、ユーザーのロールやプロファイルによってアプリのメニューがダイナミックに変わったり、音声や検索を使って直接機能を呼び出したりできるようになるという。画面の遷移についても業務や機能を意識することなく、デジタルアシスタントと対話するような形で操作することができるようになる。新デザインについては、HCM Cloudで導入が始まっているという。

 SaaS関連の製品発表の中でも、特に力を入れていたのが「Oracle CX Unity」である。マーケティングシステムと広告システムからの顧客データを統合し、ウェブサイト訪問やオンライン広告、電話対応、店頭取引など、あらゆる顧客とのやりとりにおいてパーソナライズされたコンテキストに基づく体験を提供することが可能になる。

Oracle CX Unityの説明
Oracle CX Unityの説明

 同社の「Data Management Platform(DMP)」や「ID Graph」といったサービスと連携可能なため、オンライン、オフライン、サードパーティーの顧客データソースを集約し、顧客に関する一元的でダイナミックな把握がリアルタイムで可能となる。

 Oracle CX CloudおよびOracle Data Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデントのRob Tarkoff氏は発表文で、「異なるマーケティングや広告のシステムからの顧客データを統合することは盲点をなくし、全ての顧客とのやりとりを意義あるものとする唯一の手段」とコメントする。

(取材協力:日本オラクル)

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