デジタル人材・組織の育成を社内外で進めるマイクロソフトの狙い

阿久津良和

2019-09-27 05:30

 日本マイクロソフトは9月26日、2020事業年度(2019年7月1日~2020年6月30日)にグローバル全体で新設した「CLO(Chief Learning Officer:最高人材・組織開発責任者)の取り組みに関する説明会を開催した。日本マイクロソフトでは、エバンジェリズム統括本部長やデジタルトランスフォーメーション事業本部長などを歴任した伊藤かつら氏がCLOに就任している。

 同社は、今期の経営方針で注力領域の1つに「クラウド&AI人材の育成」を掲げており、9月11日には経営層のAI(人工知能)に関する知見を高める「AIビジネススクール」の提供を発表している。伊藤氏は、顧客企業やラーニングパートナー、自社従業員を含めた学習環境の提供プログラムと解説しつつ、「(CLOの目標は)優秀な技術者がグローバルで求められるようになること。技術者の人生を豊かにする文化を日本に根付かせたい」との熱望を披露した。

日本マイクロソフト CLO 執行役員 プロフェッショナルスキル開発本部長の伊藤かつら氏
日本マイクロソフト CLO 執行役員 プロフェッショナルスキル開発本部長の伊藤かつら氏

 Microsoftは、以前から自社技術の認定プログラムとして「Microsoft Professional Program(日本ではマイクロソフト認定プロフェッショナルプログラム)」を提供してきたが、2019年内に同プログラムを終了させ、「Microsoft Learn」(関連資料)」に集約させると明言している。同社でCLOの役割を持つのは14人、その1人である伊藤氏は、CLOの役割を「デジタルトランスフォーメーションを推進する人材の育成」と位置付け、今期から顧客企業に対する直接支援プログラムを設けることを明らかにした。

 大企業向けのトレーニングプランとしては、日本マイクロソフト内に技術解説を行う「Azureテクニカルトレーナー」と、企業の育成目標に応じたプランを提供する「トレーニングプログラムマネージャー」を新設する。このプランでは無償のAzure基礎トレーニングイベントやオンデマンド形式のオンライントレーニングを含む。さらに有償のプランでは、Azureテクニカルトレーナーおよびラーニングパートナーの認定トレーナーによる研修も提供、有償のAzure認定試験の受験を促す。

 同社は当初、日本でのプランに対する需要が不透明だと見ていたという。だが、「ある製造業の人事担当者と話をしたところ、『経営企画や工場生産といった全社レベルの人材開発が必要』と、“Tech intensity”(変革の連鎖を促す基盤的な存在を意味するMicrosoftの造語)を社内に展開しようとしている」(伊藤氏)と、高い需要があることを明らかにした。

大企業向けトレーニングプランの構成要素(出典:日本マイクロソフト)
大企業向けトレーニングプランの構成要素(出典:日本マイクロソフト)

 また、中堅・中小企業の向けプランは無償トレーニングの2種類になるが、伊藤氏は「オープンソースソフトウェア(OSS)の概念に近いとプラン」と説明する。OSSはソースコードを公開しているが、「Microsoftのテクノロジーに関するあらゆるラーニング情報をアクセス可能にし、『Microsoft Learn』に集中させる」(伊藤氏)という。既に実施中のAzure基礎トレーニングイベントは好評だといい、今後は容量を増やす予定だとしている。これまで同社の認証プログラムを提供してきたパートナー企業に対しても、人数など具体的なスキル育成目標を設定していく。

 同社の従業員に対しては、6カ月ごとに履修条件を指定する「テクニカルスキル」、営業や法令順守、セキュリティといった要素を持つ「ソフトスキル」、管理能力を主とする「マネージャースキル」の3点を軸に、オンラインによる自主学習や現任訓練、座学・ハンズオンを付与する。学習行動に積極性を持たせるため、同社が実施した週勤4日・週休3日制のトライアル「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」が役立ったという。

 このトライアルは2019年8月と2020年8月の試験運用になるが、9月以降は木曜日に1時間の学習時間確保を推奨する「ラーニングチューズディ」、月に1回、5時間の学習時間を確保する「マンスリーラーニングディ」を実施していく。日々の学習成果を披露するコミュニティーの醸成を目的とした取り組みに対して、伊藤氏は「次の変革に進めるドライバーになる」と説明した。

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