Schneider Electricは9月、エッジコンピューティングをテーマにしたメディアカンファレンス「Life at the Edge」を開催、同社シンガポールオフィスのショールーム「Schneider Electric Innovation Hub」で事業拠点に壁掛け可能で世界最小クラスという6Uサイズのマイクロデータセンターを発表した。
Schneider Electricが発表したエッジコンピューティング向け6Uサイズのマイクロデータセンター
エッジコンピューティングは、多種多様かつ膨大なデータを、データの発生源に近い領域(エッジ)で処理、活用する概念。特にリアルタイムな処理や制御、データの鮮度、大量データ処理の効率化が求められる用途で期待されている。同社セキュアパワー事業部門エグゼクティブバイスプレジデントのDave Johnson氏は、デジタルトランスフォーメーションを志向する企業が広がる昨今、データの利用や活用でエッジコンピューティングが重要な役割を果たすと述べた。
例えば、小売では実店舗の来店客の動きをリアルタイムに分析しながらその場で商品を訴求する。あるいは、工場の生産ラインで機器の動作データの分析からマイクロ秒~数秒先の動きを予測し、リアルタイムに機器を制御して安定稼働を継続することで生産性を向上させるといった取り組みが行われている。
アジア太平洋地域別の企業でのエッジコンピューティングへ取り組み状況。現状では日本・北東アジアが最も進んでいるが、将来はオーストラリア/ニュージーランド、中国、インド、インドネシア、シンガポールで加速すると予想されている
同社によれば、エッジコンピューティングの取り組みを推進する企業はまだ2割に満たないが、約65%の企業が関心を寄せているという。アジア太平洋地域では、日本・北東アジア地区の15.9%を筆頭に、インドやインドネシアでもエッジコンピューティング環境に乗り出す企業が1割を超え始め、データの発生源に近いエッジでデータを処理するデータセンター機能の需要の拡大が見込まれている。
新たに発表したマイクロデータセンターは、6Uサイズの筐体内にハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)機器、電源や無停止電源装置(UPS)、冷却装置などのエネルギー関連機器を収容でき、監視カメラや施錠装置などの物理セキュリティ機能を備える。クラウドベースのリモート管理サービス「EcoStruxure IT」に対応する。
6Uサイズのマイクロデータセンターの筐体内部
想定する利用場所は、流通や金融などの店舗、病院などの医療現場、学校などの教育機関といった、サーバールームやデータセンタークラスのファシリティーが備わっていない“現場”だ。想定重量は約150キロで執務スペースへの床置きや壁掛けができ、動作環境についても、現在のサーバーが気温30~40度になるような場所でも稼働することから、一般的なオフィスでは問題ないという。同社オファー管理担当バイスプレジデントのBhagwati Prasad氏は、「最大240TBのストレージを搭載でき、現場からデータを収集し、クレンジングし、分析のためのプレパレーションもでき、必要に応じてクラウドと連携する。1つの筐体でエッジに必要なほぼ全ての機能を提供する」と話した。
壁掛け設置工事のイメージ
なお、シンガポールオフィスは東アジア/日本市場の事業拠点と位置付けられ、ショールームは2008年のオフィス移転に伴って開設された。ビルは1995年に建設された企業団地にあり、同社は移転の際に大幅改装して、ビル全体を先進的なスマートシティーやエネルギー管理ソリューションの実験展示施設とした。シンガポール政府から環境にやさしい事業施設としても認定を受けているという。
(取材協力:Schneider Electric)