AIは人類の味方--フェイクニュースやサイバー攻撃を阻止できるAIの可能性 - (page 2)

Garry Kasparov

2019-10-04 06:45

 多くの新型デバイスが登場し、マルウェアがまるで山火事のように拡散するなか、Gupta氏の使命は重要だ。機械学習が不可欠なのは、セキュリティツールにとって、これこそが進化を続けるマルウェアへの唯一の対抗策だからだ。ウイルスシグネチャの標準データベースは、ほんの数秒で時代遅れになってしまう。

 この絶え間ない戦いでは、リソースが重要な役割を果たす。メキシコのメディアによるわれわれのインタビューでGupta氏が説明していた通り、個人や企業のサイバー攻撃に対する防御策は通常、国家規模の組織が持つ膨大なリソースに圧倒される。国家のハッカー軍は通常、お互いを標的としているものの、最近では電力網や政治家のメールアカウントなどを標的にすることが増えている。ハッキングは戦車の大群よりも早く、低コストで地政学的な世界を変える可能性を持っている。

攻撃は最大の防御

 こうした状況では、抑止力こそが唯一の効果的な防御策だ。もちろん、防御はAvastの仕事だが、チェスプレイヤーとしての筆者の哲学は、「攻撃は最大の防御」だった。

 これは地政学的なゲームにも当てはまる。重要なのは、攻撃の脅威だ。防御だけで有効に機能するに、あるいは非常に長期的に国家レベルでカバーするには、網羅すべきサイバー領域はあまりにも膨大である。

 AIは、私たち自身と私たちの社会を、フェイクニュースやフェイク動画、そして誤った情報による攻撃から守ってくれる。人間の視覚や聴覚では、本物の動画とAIが改ざんしたフェイク動画の判別は困難だが、AIの検知アルゴリズムであれば可能だ。配信前にフェイクを排除し、公開前に自動でラベル付けできれば理想的だろう。

 長くて困難な戦いになりそうだが、私たちは過去にも同様の戦いを経験してきた。

 当時、迷惑メール(スパム)によってインターネットが終わると考えた専門家もいたが、今ではそうしたことを意識することはほとんどない。クライアント側のフィルタリングはもちろん重要だが、それだけが機能した訳ではなかった。スパマーに対しての厳罰、例えば懲役刑などが課せられたことが、強力な抑止力となったのである。悪意による改ざん動画やフェイクニュースの規制には、言論の自由を考慮する必要があるものの、私たちにはそうした戦いで成功を収めたという実績がある。

 今後はこうした脅威を回避するために必要な堅牢な構造を、人のインテリジェンスと機械のインテリジェンスを融合させて作り上げる必要がある。幸い、人類の側にはRajarshi Gupta氏のような人物とAIが存在している。

この記事はAvastのブログを翻訳、編集したものです。

Garry Kasparov

Human Right Foundation理事長

1963年旧ソ連アゼルバイジャン生まれ。現在はニューヨーク市在住。2005年からロシアの民主化運動を展開している。オックスフォード大学マーティンスクールの客員フェローとして、人と機械のコラボレーションを中心に講義を担当。ビジネスや学問、政治の領域を対象に意思決定、戦略、テクノロジー、人工知能をテーマとした講演活動を続けている。政治、認知、テクノロジー分野での執筆活動は大きな影響力を持っており、世界中の主要出版物で数多く取り上げられている。2016年にAvastのセキュリティアンバサダーに就任した。

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