しかし、SD-WANの機能はこのトラフィックのルート決定だけではありません。
SD-WANを導入した場合、本社、ブランチオフィス、リモートサイトなど企業のローカルなネットワークと、Amazon Web Services(AWS)やMicrsoft Azure、Google Cloud、あるいは他のクラウドとの間にソフトウェアのレイヤが設けられます。このレイヤはネットワークトラフィックをカテゴリ分けし、それに基づいてネットワーク帯域幅の利用を最適化します。
これによりオンライン会議など制約なしの帯域幅と非常に低いレイテンシを要求するトラフィックは常に優先され、メールなどのトラフィックのスピードは必要に応じて下げられます。この操作に気付くユーザーはまず存在しません。
SD-WAN導入により、IT部門は従来のハブ&スポークから、トラフィック最適化機能を備えたクラウドPOP(Point Of Presence)への直接接続に容易に切り換え、Office 365をはじめとするSaaS(クラウドアプリケーション)のユーザーエクスペリエンスを改善できるようになります。これによってレイテンシが減少するとともにボトルネックやその他の障害が最小限に抑えられ、企業のWANリンクが他のトラフィックに解放されるためユーザーエクスペリエンスが劇的に向上します。
クラウドアプリケーションにSD-WANを利用することは、企業にとって水車を使った粉ひき機から電気を動力とする生産工場に移行するようなものです。新しい、より高速で明るい世界が待っています。
- 永長純(ながおさ・じゅん)
- シトリックス・システムズ・ジャパン セールス・エンジニアリング本部 本部長
- 前職ではアジア太平洋地域を担当し、様々な国の企業にビジネスやコスト、人の観点から提案を実施。その経験を生かし、日本企業が国内とグローバル競争で勝つためにワークスタイル変革を含めたソリューションを提供するのがミッション。
- 小林伸睦(こばやし・のぶちか)
- シトリックス・システムズ・ジャパン アジア・パシフィック・ジャパン事業推進本部 ソリューション・推進マネージャー兼エバンジェリスト(総務省テレワークマネージャ)
- イベントやセミナーなどの活動を通して働き方やワークスタイルの変革を推進しながら、「デジタルワークスペース」ソリューションのエバンジェリスト活動を行う。新しいテクノロジで市場の開発を目指す。