東芝は10月7日、列車の遅延確率を算出する技術を開発したと発表した。この技術は、鉄道会社が運行図表(ダイヤ)作成の際に活用できるという。
鉄道の遅延は、目的地への遅れだけでなく駅での混乱につながり、乗客の利便性・満足度の低下をもたらしている。特に後続列車に遅延が波及して生じる「2次遅延」は、駅での混乱を引き起こす。大規模な2次遅延は一度発生するとダイヤが大きく乱れてしまうため、列車の遅延を事前に予測して予定通りに運行することが求められている。
2次遅延の評価は従来、想定した遅延シナリオを何度も試す方法が主流だった。しかし、頻繁には起こらない2次遅延を正確に評価するには膨大なシミュレーションが必要となり、鉄道会社の負担が時間・費用ともに重くなっていた。例えば、0.01%の確率で発生する遅延を再現するには、少なくとも数万回程度のモンテカルロシミュレーションが必要となる。モンテカルロシミュレーションとは、試す現象に対してその入力に乱数を与えることで出力値を観測する手法だ。
そこで東芝は、膨大なシミュレーションを行わなくても高速かつ正確に列車の遅延確率を算出できる「列車遅延リスク評価アルゴリズム」を開発。このアルゴリズムは、実際の運行パターンやダイヤの発着時刻の情報をもとに確率伝搬モデルを作成し、実際の運行実績を学習させることで 2 次遅延確率の計算精度を向上させられる。確率伝搬モデルとは、各列車の発車・到着・通過の事象とその間における遅延の波及関係をネットワークで表し、各駅の 2 次遅延確率をネットワークに沿って計算するモデル。さらに、2次遅延確率の値を確率伝搬モデルに基づく数式から導出しているため、モンテカルロシミュレーションで必要とされる膨大なシミュレーションを行わずに2次遅延確率を計算することが可能だという。
このアルゴリズムを用いることで、実際のダイヤをはじめ、さまざまなダイヤ候補ごとに各列車の各駅での2次遅延確率や遅延時間を見積もり、列車遅延リスクを評価できるという。また列車の遅延リスクを織り込んだダイヤを作成することで、ダイヤの乱れを削減することが期待される。
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