本記事は楽天証券が提供する「トウシル」の「TOP 3分でわかる!今日の投資戦略」からの転載です。
今日のポイント
- NYダウの戻りが大きいのに日経平均・上海総合株価指数の上値が重い
- 日経平均株価・上海総合株価指数の戻りが鈍い3つの理由
- NYダウは過去30年、日経平均を上回るパフォーマンスを実現
- NYダウは1990年代に大きく上昇、2000年代は足踏み、2010年から再び上昇加速
これら4点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
NYダウの戻りが大きいのに日経平均・上海総合株価指数の上値重い
2019年に入ってからNYダウ平均株価の戻りが大きいのに日経平均株価・上海総合株価指数の戻りは鈍いままである。
NYダウ・日経平均・上海総合株価指数の動き比較:2017年末~2019年10月7日

注:2017年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成
これには3つの理由がある。
日経平均株価・上海総合株価指数の戻りが鈍い3つの理由
(1)貿易戦争のダメージが製造業に集中
日本と中国はともに製造業王国である。産業構造を見ると製造業の比率が高く、貿易戦争のダメージを受けやすい構造だ。
米国も製造業だけ見ると業況悪化が顕著である。ところが、米国では早くから製造業の空洞化が進んでいる。既に製造業への依存は小さくなっている。代わって、IT・ヘルスケア・金融など非製造業の構成比が高くなっている。経済構造の違い故に貿易戦争のダメージは日中に重く、米国には比較的軽くなっている。
(2)IT大手の力の差が歴然、米企業が世界のITインフラを支配
Google、Amazon.com、Facebook、Apple、Microsoftなど世界のITインフラを支配する米IT大手が高収益を稼ぐ中、日本のIT大手の業績はさえない。米IT大手が世界のITインフラを支配して稼いでいるのに対し、日本のIT大手は世界標準を取ることができず、狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えている。
中国には、Alibaba、Tencent、Baiduなど中国市場を支配して巨大化したIT大手がある。中国政府が米IT大手の参入を拒絶したおかげで、中国のIT大手が中国市場を独占的に支配して成長してきた。ただし、米IT大手のように世界のインフラを支配する力はない。
近年、ITを使ったサービスが世界中に広がり、ネットがリアルを代替する流れが加速している。こうした環境下、IT産業の力の差が米国と日本、中国の株価パフォーマンスの差につながっている。
(3)シェールオイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい
米国はかつて、世界最大の原油輸入国だった。ところが、シェールオイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となり、原油を輸出するようになった。かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェールオイル、シェールガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めた。その恩恵が今も続いている。この大きな変化をシェールオイル&ガス革命と呼ぶ。