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レッドブルF1チームに聞く、数千~数万キロ離れたコラボレーションと仕事術

國谷武史 (編集部)

2019-10-18 06:00

 自動車レースのFormula 1(F1)は、毎年約20カ国のサーキットで開催されている。参戦するF1チームの多くが欧州に本部を構え、レースごとに数千~数万キロも離れたサーキットの現場との間で、リアルタイムにコラボレーションをしなければならない。F1チームのIT環境とその活用や成果について、日本でのレース開催前日となる10月10日、三重県の鈴鹿サーキットでAston Martin Red Bull Racing(以下、レッドブルF1)と同チームのテクニカルパートナーを務めるAT&Tが説明会を行った。

 レッドブルF1は2005年からF1に参戦し、2010~2013年は4年連続で年間優勝を達成した強豪チームの1つ。2019年からホンダがパワーユニット(ターボエンジンとモーターのハイブリッド動力)を提供するなど、日本との関係も深い。チームオーナーのRed Bullはオーストリアの飲料メーカーだが、F1チームの本部は英国ロンドン郊外のミルトン・キーンズにあり、周辺にはレースカーの設計開発に関連する施設も点在している。

 レッドブルF1チームは総勢800人体制で、サーキットで活動するのはこのうち約80人という。2019年のF1は3~11月にかけて約2週間おきに21カ国で開催される。1つのレースは金~日曜日の3日間だが、準備や撤収、移動も含めれば、F1チームはシーズンの間、常に異なる場所と本部との間でコラボレーション作業をしている。AT&Tは通信事業者として、こうした働き方をしているレッドブルF1チームに、グローバルの通信インフラやアプリケーション、セキュリティなどのサービスを提供する立場だ。

2019年の日本グランプリは台風19号の影響により日曜日に予選と決勝が行われた
2019年の日本グランプリは台風19号の影響により日曜日に予選と決勝が行われた

F1チームのコラボレーション

 同チームで部門間やAT&Tなど技術パートナーとの仲介を担当するテクニカル パートナーシップス ヘッドのZoe Chilton氏は、「F1の活動はパートナーを含めたチーム全体の総力戦であり、1年を通じて“接続性”を確保することが非常に重要だ」と話す。F1チームの活動はレースへの参戦だけではなく、年間を通じたレースカーの開発と改良があり、スポンサーイベントなどのマーケティング活動もオンライン/オフラインを問わず世界各地で多数行われる。IT活用がチームの活動全体を大きく左右するという。

 「F1チームはレースの開催地やスケジュールを選べない(主催者側が決定)。サーキットの環境も全く異なる。45トンもの機材と多数のスタッフが常に世界中を移動している。厳しい制約の中で現場と本部やパートナーがリアルタイムにコラボレーションをするには、どこでも同じIT環境を構築しなければならず、AT&Tのようなパートナーが欠かせない」(Chilton氏)

 チームの本部では、数百人のエンジニアがレースカーの研究、設計、開発、製造に携わる。F1では車両の規格や規則が毎年変更され、シーズン中にも大きな変更が度々ある。本部のエンジニアは、こうした変化に対応しながらHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)などのIT環境を駆使してレースで優勝するための作業に注力する。

 レースの現場は、本部やパートナーと常に連携しながら、レースで優勝するための作業に当たる。サーキット環境は鈴鹿のような専用コースから市街地の一般道を使うモナコやシンガポールまで千差万別であり、天候や気温、路面状況なども常に変化する。そうした変化に対応しながら、初日と2日目午前の3回の練習走行でレースカーを調整し、2日目午後の予選でスタート順位が決まるコース1周の最速タイムを出すための作業に追われる。最終日の決勝は2時間近いレースをトラブルなく上位で走り切り、結果を出さなければならない。

 チームの本部は現場からの膨大なデータを解析し、走行状態などをシミュレーションして、現場に最適な設定や調整を伝える。現場は本部に情報を送り、本部のフィードバックを試してその結果を再び伝え、本部でさらに検証する。レースの間はこの作業が幾度となく繰り返される。やりとりをスムーズに行うには、数値データの送受信はもとより、映像や音声などのコミュニケーションでも遅延はできるだけ少ない方が良い。

 「AT&Tが提供するネットワーク環境は、どこのサーキットでもほとんど遅延が気にならず問題なく利用している。ミルトン・キーンズ(チーム本部)とシルバーストーン(英国のレース開催地)は20kmも離れていないので、素晴らしいのは当然だが、英国から遠く離れたオーストラリアでも遅延は300ミリ秒ほどしかない」(Chilton氏)

 AT&Tは、レッドブルF1チームの英国内の拠点と各国のサーキットの現場に加え、ホンダの国内のF1開発拠点(栃木県など)とも接続する専用のネットワークを提供している。AT&Tジャパン 代表取締役社長の岡学氏によれば、レースの有無を問わず常にリモートでのコラボレーションが行われることから、同社ではレッドブルF1チームの本部内にネットワーク運用センターを設置し、サービス品質を確保しているという。

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