オフィスでの仕事は沼地を歩くようなものと感じられることがあります。朝元気よく職場に着いたとしても、(家にある消費者向けノートPCよりもはるかに古い)デスクトップPCの起動すら永遠の時間が掛かるように思われます。次いで何らかの作業を開始する、あるいは要請に承認を与えるだけのため、次々に開く終わりのないアプリケーションウィンドウを順にクリックしなければなりません。
このような劣悪なエクスペリエンスは従業員のやる気をそぎ、その生産性を大きく引き下げます。
従業員エクスペリエンスは、職場に対する従業員の期待と、会社が提供する業務環境が重なるところに生まれます。理想はこの双方が100%一致することです。
これは簡単なことに聞こえるものの難問が存在します。エクスペリエンスは個々の従業員からの期待に基づいて生まれ、したがって一般的には何らかの共通部分があるものの、それぞれの従業員の間には大な違いが存在します。したがって経営陣から人事やIT部門までの会社側はこの共通の部分を見つけ、それを検証した上で判明したことに基づいて行動を起こさなければなりません。
現在の従業員は会社のIT環境に対しても個人で使用する消費者向けアプリケーションやスマートデバイスと同等の効率や使い勝手を求めており、この状況は近年ますます困難さを増してきています。
これについてはスマートデバイス、すべての人々がアクセスする消費者向けクラウドサービスが“洗練度合い”の基準となってきています。「iPhone」の登場とそれに続くスマートデバイスの巨大な波以来、いわゆる“コンシューマライゼーション”によってIT部門と企業の従業員エクスペリエンスがクリアすべき基準は大きく引き上げられました。
コンシューマライゼーションは企業にとって長い間大きな論点となってきましたが、現在ではこの議論が新たな高みに達しています。スマートデバイスと無数のアプリケーションやクラウドサービスの中で育った、1981~1996年に生まれた“Generation Y(Y世代)”とその後の1997年以降に生まれた“Generation Z(Z世代)”が、2020年には世界の企業従業員の約半数を占めるためです。
今後企業が成功を収めるには、この新たなタイプの従業員からの期待に応えることが必須となります。つまり、職場が「コンシューマライゼーション実現か死か」によって優れた環境を作り出すか、あるいは新しい人材にとってまったく魅力のないものとなるかを意味します。
企業には自らの従業員と、デジタル化が進む環境において従業員とどのように関わるかについて真剣に取り組む、あるいは取り組み直すことが求められています。
企業は積極的に関与する従業員に成功を約束しなければなりません。Gallupが2017年に発行した「State of the Global Workforce」レポートによれば、積極的に関与する従業員を持つ企業は売上高が20%、利益率は21%上回っていました。このレポートでは従業員の67%は仕事に積極的に関与しておらず、さらに18%は「積極的に非関与」の状態にあることも示しています。