業界のオピニオンリーダーたちは長年の間、「ソフトウェアファクトリー」や「ソフトウェアの工業化」の可能性について議論してきた。これは、ビルディングブロックを利用して、ある程度自動的にコードを生産できるようにすることを意味する。企業のソフトウェア工場化が十分に実現しているかどうかは議論の余地があるが、アプリケーションやサービスを人間の手で1つずつ作るやり方から、より大規模な生産が行える体制に移行することにはメリットがある。
そして最近では、「AI工場」を作ろうという議論が出てきている。ハーバードビジネススクールのMarco Iansiti教授とKarim Lakhani教授は、新著「Competing in the Age of AI」(AI時代の競争)の中で、それは「データの収集、アナリティクス、意思決定の産業化を進め、現代企業の中核部分を作り替える」ことに関連すると述べている。同氏らは、「AI工場は、21世紀の企業のデジタル経営モデルを支えるスケーラブルな意思決定エンジンだ」と話す。「経営上の意思決定は、ますますソフトウェアに組み込まれるようになっている」
同氏らは幸い、「Netflixのような企業でなくても、AI工場を作ることはできる」と述べている。AI工場を作り、運営するための4つの基本的な構成要素は次のようなものだ。
データパイプラインの強化:このプロセスには、データを「システマチックで持続可能、かつスケーラブルな方法」で、データの収集、入力、クリーニング、統合、処理、保護を行うことが含まれる。Iansiti氏とLakhani氏は、事業を「データ化」し、「どんな事業であっても通常行われている活動や取引からシステマチックにデータを抽出」している企業の例として、Netflixを挙げた。また同氏らは、データのクリーニングと統合が大きな課題になる可能性があると警告している。同氏らによれば、AI工場を作るにあたって最初にすべき仕事は、正しく機能するデータパイプラインに投資することだという。
アルゴリズムの開発:これは、予測の機能を開発するプロセスだ。Iansiti氏とLakhani氏は、アルゴリズムは「売上高の予想といった比較的簡単な予測から、株式の高頻度取引のための銘柄選択の提案、複雑な画像認識や言語の翻訳に至るまで、さまざまな場面で使われる」と述べている。