RPAの前にやるべきこと--SAPが導入の成功率を高めるソリューション群

藤本京子

2019-10-21 07:00

 SAPジャパンは10月18日、ビジネスプロセスの最適化を支援する新ソリューション群の説明会を開催した。SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム&テクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサーの首藤聡一郎氏によると、SAPでは顧客のビジネスプロセスの50%を自動化することを目指しているという。

SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム&テクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサー 首藤聡一郎氏
SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム&テクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサー 首藤聡一郎氏

 ビジネスプロセスの最適化といえばこのところRPA(ロボティックプロセスオートメーション)が注目されているが、「70~80%のユーザーはRPAの効果を実感できていないとも言われている。それは、課題がどこにあり、どう自動化すべきかしっかり診断せずにツールを入れるケースが多いためだ」と首藤氏。そこでSAPでは、「自動化の前にプロセスを解析し、自動化した後はその効果から必要に応じて再度解析するといったように、永続的に最適化を継続するようなソリューションを提供する」という。

ビジネスプロセスを最適化するSAPのソリューション群
ビジネスプロセスを最適化するSAPのソリューション群

 ソリューションの説明に当たったのは、SAPジャパン プラットフォーム&テクノロジー事業本部 部長の岩渕聖氏だ。同氏が最初に紹介したのは、「SAP Intelligent Business Processes Management(SAP Intelligent BPM)」。これは、紙ベースのプロセスをデジタルワークフローに移行する際に役立つというもの。ワークフローの機能に知的なエンジンを組み合わせており、チャットボットソリューション「SAP Conversational AI」をビジネスプロセスの中に統合したほか、ERP(統合基幹業務システム)の日常業務の画面の中にワークフローを組み込んでデジタルワークプレイスを実現しているという。

SAP Intelligent BPM
SAP Intelligent BPM

 次に岩渕氏が紹介したのは、稼働中のプロセスにおける問題やボトルネックを可視化し分析するソリューション「SAP Cloud Platform Process Visibility」だ。エンドツーエンドでプロセスを関連付け、部分的な最適化を回避してプロセス全体を合理化する。また、ボトルネックを解消してプロセスを変革するほか、プロセスステータスを分類して緊急性を描写。プロセスの評価指標を作成し、現在と過去のプロセスパフォーマンスを理解することも可能だ。

 岩渕氏は、SAP Cloud Platform Process Visibilityについて「今後は即座にビジネスに影響を与える問題を特定し、効果的に対処する機能や、問題が発生する前に予測して対処する機能もリリース予定だ」としている。

SAP Cloud Platform Process Visibility
SAP Cloud Platform Process Visibility

 こうしたソリューションにより、「プロセスをうまく流れるようにした上で実行するのがRPAだ」と岩渕氏は言う。同氏は、30~50%のRPA立ち上げプロジェクトが失敗しているとのデータを示し、「SAP Intelligent Robotic Process Automation(SAP Intelligent RPA)でこの状況を改善する」としている。

 SAP Intelligent RPAは、「SAPアプリケーションや周辺プロセスの自動化を考慮した実行形態になっている」と岩渕氏。具体的には、ロボットと人間が協働で作業し部分的な自動化プロセスを実現する「デジタルアシスタント」の形態と、ロボットが人間の監視下で自律的に作業する「デジタルワーカー」という完全な自動化プロセス形態の両方をRPAの機能として提供する。「人が操作を覚えさせるのではなく、業務プロセスを自動的に実行するエンジンとするため、サーバー側にある程度機能を実装し、これらの機能をPCを介さず実行できるようにする」と岩渕氏は説明している。

SAP Intelligent RPA
SAP Intelligent RPA

 また、SAP Intelligent RPAは、RPAのコア部分にAI(人工知能)技術を埋め込むことで、自動化と自律範囲を拡大しているという。インターフェースには「Conversational AI」を用意。これが人間の耳や口の役目を果たし、外部情報を取り込む。計算や判断は、人間の頭脳に当たる「Machine Learning」が担当、自己学習によって何をすべきか判断し、タスクを実行する「Intelligent RPA」が手足を動かすことになる。Conversational AIとMachine Learningは既に数年前から製品に実装されていたが、Intelligent RPAは2019年夏にリリースされたばかりだという。「これらの技術を組み合わせ、エンドツーエンドで自動化を実現する」と岩渕氏は述べている。

 さらに、SAP Intelligent RPAの新たなサービスとして、SAPのベストプラクティスをベースに構築済みのRPAボットを提供するという。9月には16の業務テンプレートがリリースされたが、「12月末までに追加で29のテンプレートをリリースし、合計45となる予定だ」と岩渕氏。今後も四半期ごとにテンプレートを追加していくという。

 このほか、「SAP Intelligent RPAコンテンツストア」もリリースする予定だと岩渕氏。SAPが開発したものだけでなく、「エコシステムを活用し、パートナーのコンテンツもストア上で提供できるようにしたい」と岩渕氏は語った。

SAPジャパン プラットフォーム&テクノロジー事業本部 部長 岩渕聖氏
SAPジャパン プラットフォーム&テクノロジー事業本部 部長 岩渕聖氏

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