MASは何らかの物体を検知した場合、IBMの「IBM Operational Decision Manager(ODM)」という包括的意思決定自動化ソリューション利用する。ODMは、受け取った入力と、あらかじめ教えられた航行規則を組み合わせ、航路を変更するかどうかを決定するよう訓練されている。
Stanford-Clark氏は「ODMは、ミッションの総合的な目標を見失わないようなかたちで、障害物を避けて航行進路を決定する」と述べ、「例えば、気象データを常に監視し、危険な航路を避けながら、最適な航路を導き出したりする。これは正しい意思決定を下すルールベースのシステムだ」と説明した。
自律航行船は船舶業界において注目を集めており、人工知能(AI)を活用した操船に目を向ける大手IT企業はIBMが初めてではない。
例を挙げると、Rolls-Royceは2017年に、Googleと協力し、AIベースのオブジェクト分類システムを訓練し、船舶における状況の認識能力を向上させると発表した。そしてRolls-Royceはその1年後の2018年にIntelとの提携を発表し、インテリジェントな航行システムの開発に踏み出している。
しかし、MASが2020年の航海で成功を収めれば、あらかじめプログラムされていない航路で大西洋を横断するという野心的な目標を達成する最初の船舶の1つとなる。
航海を通じて収集されるデータは、いったんローカル環境に保存され、衛星回線が使用可能になった時点で「IBM Cloud」にアップロードされる。こういったデータには、同ミッションの主目的である海洋研究のためのデータだけでなく、船舶自体の性能に関するフィードバックを運行側にもたらすデータも含まれている。
Stanford-Clark氏によると、MASはそれ自体が研究プロジェクトであり、大西洋を横断する航海には依然としてリスクが存在しているという。同氏は「間違いなく成功すると100%の自信を持っては言い切れない」と述べた。しかしいずれにしても、同テクノロジーの向上に役立つ情報がもたらされるはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。