日本オラクルは10月28日、「Oracle Database」の技術動向と製品戦略に関する記者説明会を開催した。米Oracle データベース・サーバー技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのAndrew Mendelsohn氏らが来日し、9月に開催された年次イベント「Oracle OpenWorld 2019」(OOW 2019)からデータベース関連の発表内容を中心に振り返った。
Mendelsohn氏は、この数年注力している「自律型データ管理」をテーマに説明。同社のデータ管理の目標は、データベースに関連するソフトウェア、インフラ、クラウドで革新をリードすることにあるとし、“データマネジメント”から“データプラットフォーム”へと発展させていく方針を示した。
米Oracle データベース・サーバー技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのAndrew Mendelsohn氏
そこで中核となる製品は、「Oracle Database」「Oracle Exadata」「Oracle Autonomous Database」になる。
Oracle Databaseは「19c」が現行版となる。膨大に発生するIoTデータを高速に処理する「Streaming Insert for IoT」の搭載や「Active Data Guard」の機能拡張などが図られた。2020年にリリースされる最新版の「20c」では、ブロックチェーン技術を用いた新たなテーブルタイプや、高速なデータアクセスを可能にするパーシステント(永続性)メモリーの対応などを予定している。
特にパーシステントメモリーについて、Mendelsohn氏は「データベースのアーキテクチャーを変える破壊的な技術」と強調した。
「Oracle Databaseは、あらゆるデータタイプのSQLクエリーやトランザクションを処理できる“統合型”のデータベースだ。非構造化データの管理や分析、マイクロサービスやクラウドのような最新技術にも対応している」(同氏)
Oracle Database 20cの概要
OOW 2019では、Exadataの最新機となる「Oracle Exadata X8M」が発表された。ネットワーク接続が、最大転送速度が毎秒40ギガビットのInfinibandから毎秒100ギガビットのRDMA over Converged Ethernet(RoCE)に変更となった点が大きな特徴だ。
これと、Intel Optane DC Persistent Memoryモジュールを組み合わせることで、I/Oレイテンシーを従来世代と比べて10分の1以下となる19マイクロ秒未満としている。
「Exadata上のデータベースワークロードはオンプレミス、クラウドの全てに対応し、アプリケーションの変更も不要だ。高性能、拡張性、信頼性の面で他社製品と差別化できる」とMendelsohn氏は話す。
“自律型”のデータベースをうたう「Autonomous Database」については、専有環境を用意する導入オプションを提供開始した。現在は中小企業での導入が多く、東京リージョンでの利用も順調に伸びているという。これまでOracle Databaseを使ったことのない新規顧客の開拓にも役立っているとした。
説明会では、製造システムを提供する英MESTECの導入事例を紹介。Microsoft AzureとAutonomous Databaseを専用線で接続し、本番環境で利用する初めての顧客という。なお、OOW 2019では、Microsoftとの提携強化が発表されており、Oracle CloudとMicrosoft Azureの相互接続については、北米東部(アッシュバーン)とロンドンに加えて、数四半期中に米国西部、アジア、欧州へと拡大していくことを明らかにしている。
Mendelsohn氏は最後に、開発者や学生がデータベースの構築・学習・検索を行える無償プラン「Always Free」を説明した。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のテナントごとに2つのAutonomous Databaseインスタンスを無償で立ち上げられ、インスタンスごとに20GBのデータベースストレージが割り当てられる。日本でも、既に数百件程度の利用があるという。
Autonomous Databaseの今後については、データの統合・変換・仮想化・分析、アプリケーション開発、機械学習などの領域まで含めた「Autonomous Data Platform」へと向かっていく方向性を示した。
Oracleが方向性を示したAutonomous Data Platform