リモートワークに必要な「環境」と「範囲」--チェックリストから考える - (page 2)

なかむらアサミ (サイボウズ チームワーク総研)

2019-11-05 07:15

リモートワークの「範囲」を定める

 とはいえ、全社員に対して前述の1~10を整えるのは難しい、と考える方もいらっしゃるでしょう。もちろん、いきなり全社員に対してでなくても構いません。下記の図1は、範囲と投資額を表したものです。

図1:対象となる範囲と投資額(出典:サイボウズ)
図1:対象となる範囲と投資額(出典:サイボウズ)

 「誰が」「どんな業務を」リモートワークで可能にするのか、で環境への投資額は変わります。

 「人」の範囲については、まずは、役員や緊急時に対応が必要な人から始める、本部長レベルから始めるなど、役職から範囲を定める場合、必要または可能な部署から始めるといった部署で範囲を定める場合など、順を追った始め方が安心でしょう。

 「業務」の範囲については、「メール対応、電話対応」は在宅で可能とする、「資料作成」は在宅勤務で可能とする、など、“どの業務を在宅勤務でOKとするか”で整える環境と投資額は変わってきます。環境を整えるのか、対象となる人または業務から考えるかは各社の状況にもよりますが、いずれも並行して考える必要があります。まず自社で“どの範囲から”始めるのか、ぜひ考えてみてください。

中途半端な環境から生まれる不満例

 実際にある企業から聞いたお悩みの声を紹介します。この企業はリモートワークの準備を進められているところでした。リモートワークのためにネットワーク環境について尋ねたところ、テザリングは可能だが実質難しいと言われました。

 理由を伺うと、「一定以上の容量を使用すると情シスからアラートが来る」ため。また、リモートワークをしようとした際に、支給されている会社携帯がガラケーの社員もいるため、その社員はそもそも公共か自宅のWi-Fiを使用とならざるを得ないので、リモートワークを許可していないとのことでした。

 また、「そもそも(すでに一部で導入している)在宅勤務している人が何をしているのか分からない」との声が上がっているとの意見もありました。

 このお話には、まさにリモートワークが失敗に陥りやすいポイントが2つあります。

 1つ目は、環境面における制限があると、使う人が限られるだけでなく、そもそも「リモートワークをしよう」という気持ちも起きなくなるため、リモートワークが浸透しないこと。

 2つ目は、行動が明確でない在宅勤務者に対して不信感があり、それが「自分も在宅勤務をしたらそう思われるのではないか」との気持ちを生み、同じくリモートワークの浸透につながらないことです。

 筆者も同様の環境だと、環境に制限がある面倒さを感じますし、不信感を持たれたくないので出社することを選ぶと思います(笑)。

 またこの例は、特定の企業だけでなく、多くの企業で見られる「あるある」ではないかと推測しています。

 そもそも私たちは誰しも、自分の行動に制限がかかることを嫌い、それを避けようとします。環境に制限がかかることでその本心が働くのは明らかです。

 PCやネットワークなど、環境を整えるのはお金がかかるので、回避されがちです。しかし、前回お伝えした通り、地震だけではなく、豪雨や台風などの局地的な被害もいつ我が身に起こるか分からない状況になりつつあるなか、「事業が継続できる」「働ける環境がある」といったことは、自分たちの生活に多くの安心感や未来への希望をもたらし、単なる事業継続対策以上となることは想像に難くありません。

 また、技術の進歩のおかげで以前に比べるとハードはかなり安価になっており、使いやすい安全なソフトやクラウドシステムも増えています。事業に影響を及ぼすほどの費用にならなくなってきているのも事実です。「コスト」ではなく「投資」と考えを切り替えましょう。働き方改革としての投資、BCPとしての投資、と考えると各種助成金も使え、可能性が拡がります。

 中途半端な環境で実施すると、かえって社員の不満を起こし、浸透にもつながりません。まずは「環境」(チェックリスト10項目)と「対象範囲」を確認しながら、自社でできることを1歩ずつ整えていくことをお勧めします。

 次回は、先ほどの企業例ででてきた「在宅勤務者が何をしているのか分からない」への対処法と、サイボウズがどのように失敗や試行錯誤をしながらリモートワークを可能にしてきたかをお伝えします。

(第3回は11月下旬にて掲載予定)

なかむら アサミ
サイボウズ チームワーク総研 シニアコンサルタント

サイボウズに人事として入社。
その後、広報・ブランディングを経て、現在は、サイボウズの企業研修プログラム「チームワーク総研」にて、小学生から社会人まで幅広い層にチームワークを伝えている。
離職率高い時期の人事経験など、組織の風土が変わっていく様子を体感しており、風土改革の沿革やチームビルディングの話をする機会が多い。

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