日本マイクロソフトがスマートビル分野に進出--「設備から人」中心に

阿久津良和

2019-10-31 06:00

 日本マイクロソフトは10月30日、「Smart Buildings & Spaces(スマートビルディング&スペース)」に向けた支援策を発表した。業種別リファレンスアーキテクチャー(参照構造)や実装サンプルの適用、支援パートナーとの市場変革を目指すとしている。

 今回の施策におけるパートナー企業としては、トータルソリューションパートナーにダイダン、電通国際情報サービス、ジョンソンコントロールズ、インテリジェントビル用ネットワーク用通信プロトコル規格「BACNet(Building Automation & Control Networking protocol)」ゲートウェイパートナーとしてユニテック、ファシリティー管理ソリューション構築パートナーとしてアイスクウェアド、システムインテグレーションパートナーとしてJSOL、SBテクノロジーらが参加している。

 Microsoftの本社がある米国レドモンドでは、オフィスビルの建て替えに伴い、設備データの分析による予防保全やエネルギー管理を実現するスマートビルディング計画「Energy Smart Buildings」を数年前から実施する。

 現在、約160棟における設備管理の自動化から始まった「スマートビルディング&スペース」の取り組みついて、エンタープライズ事業本部 運輸・サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長の及川智武氏は、「これまで『人中心』のビジネスを手掛けてきたが、スペース(空間)を含めた人中心のビジネスに拡大する」と語った。同社は、さらに近代的なキャンパスの構築を目指す「Campus Redevelopment」計画を実施しており、「約5年を掛けたスマート化の取り組みで得た知見をコンサルティングサービスとして顧客に届けてきた。だが、パートナー企業の支援が不可欠だと感じ、今回は国内パートナーの拡充と支援策を用意した」(及川氏)という。

 日本市場での課題についてインダストリーエグゼクティブ MaaS & Smart Spaceソリューション本部 専任部長の清水宏之氏は、「建築・不動産業界では、デベロッパーやビルオーナーより、ファシリティー(設備)中心からビルを利用する、ビルを管理する人が中心といった需要が高まっている」と分析する。各種課題を解決するとともに、利用者の満足度の最大化や建物保守業務の効率化、不動産価値の維持・向上を目指すため、「Smart Buildings & Spacesサービス連携リファレンスアーキテクチャー」の提供に至ったという。

各パートナー企業の役割(出典:マイクロソフト資料) 各パートナー企業の役割(出典:マイクロソフト資料)
※クリックすると拡大画像が見られます

 同社が既に提供する他業種のリファレンスアーキテクチャーと同様に、今回も機能マップやMicrosoft Azureを中心としたアーキテクチャーマップ、ビジネスワーカー向けの実装サンプルをビル業界向けに用意し、同社は業界共通のシステム実装方式やデータ構造などをテンプレートドキュメントにしてパートナー各社に提供する。パートナー企業は、これらを活用して顧客に対するサービス構築期間の短縮化や開発・運用・保守コストの削減を実現する。「これまでビル設備サービスとクラウド連携は難しかった。リファレンスアーキテクチャーを提供することで迅速に構築し、サービスの提供が可能」と、清水氏は利点を強調した。

 今回のビジネスソリューションについて清水氏は、「保守作業やファシリティー管理の統合、故障予測などの部分は、差別化と同時に競争領域になるが、ユーザー認証やサービル連携、データ管理・分析は共通機能と捉えている」と、非競争領域を明確に定義し、リファレンスアーキテクチャーに落とし込んでいる。「日本、ひいては世界の標準化を日本に広げるツールとして、リファレンスアーキテクチャーを成り立たせたい」と同氏は展望を語った。

日本マイクロソフトとパートナー各社の代表者
日本マイクロソフトとパートナー各社の代表者

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]