日本マイクロソフトは10月30日、「Smart Buildings & Spaces(スマートビルディング&スペース)」に向けた支援策を発表した。業種別リファレンスアーキテクチャー(参照構造)や実装サンプルの適用、支援パートナーとの市場変革を目指すとしている。
今回の施策におけるパートナー企業としては、トータルソリューションパートナーにダイダン、電通国際情報サービス、ジョンソンコントロールズ、インテリジェントビル用ネットワーク用通信プロトコル規格「BACNet(Building Automation & Control Networking protocol)」ゲートウェイパートナーとしてユニテック、ファシリティー管理ソリューション構築パートナーとしてアイスクウェアド、システムインテグレーションパートナーとしてJSOL、SBテクノロジーらが参加している。
Microsoftの本社がある米国レドモンドでは、オフィスビルの建て替えに伴い、設備データの分析による予防保全やエネルギー管理を実現するスマートビルディング計画「Energy Smart Buildings」を数年前から実施する。
現在、約160棟における設備管理の自動化から始まった「スマートビルディング&スペース」の取り組みついて、エンタープライズ事業本部 運輸・サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長の及川智武氏は、「これまで『人中心』のビジネスを手掛けてきたが、スペース(空間)を含めた人中心のビジネスに拡大する」と語った。同社は、さらに近代的なキャンパスの構築を目指す「Campus Redevelopment」計画を実施しており、「約5年を掛けたスマート化の取り組みで得た知見をコンサルティングサービスとして顧客に届けてきた。だが、パートナー企業の支援が不可欠だと感じ、今回は国内パートナーの拡充と支援策を用意した」(及川氏)という。
日本市場での課題についてインダストリーエグゼクティブ MaaS & Smart Spaceソリューション本部 専任部長の清水宏之氏は、「建築・不動産業界では、デベロッパーやビルオーナーより、ファシリティー(設備)中心からビルを利用する、ビルを管理する人が中心といった需要が高まっている」と分析する。各種課題を解決するとともに、利用者の満足度の最大化や建物保守業務の効率化、不動産価値の維持・向上を目指すため、「Smart Buildings & Spacesサービス連携リファレンスアーキテクチャー」の提供に至ったという。
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同社が既に提供する他業種のリファレンスアーキテクチャーと同様に、今回も機能マップやMicrosoft Azureを中心としたアーキテクチャーマップ、ビジネスワーカー向けの実装サンプルをビル業界向けに用意し、同社は業界共通のシステム実装方式やデータ構造などをテンプレートドキュメントにしてパートナー各社に提供する。パートナー企業は、これらを活用して顧客に対するサービス構築期間の短縮化や開発・運用・保守コストの削減を実現する。「これまでビル設備サービスとクラウド連携は難しかった。リファレンスアーキテクチャーを提供することで迅速に構築し、サービスの提供が可能」と、清水氏は利点を強調した。
今回のビジネスソリューションについて清水氏は、「保守作業やファシリティー管理の統合、故障予測などの部分は、差別化と同時に競争領域になるが、ユーザー認証やサービル連携、データ管理・分析は共通機能と捉えている」と、非競争領域を明確に定義し、リファレンスアーキテクチャーに落とし込んでいる。「日本、ひいては世界の標準化を日本に広げるツールとして、リファレンスアーキテクチャーを成り立たせたい」と同氏は展望を語った。
日本マイクロソフトとパートナー各社の代表者