MAツールのアコースティックが日本市場に参入--元IBMのWatsonマーケ部隊が独立

藤本和彦 (編集部)

2019-11-05 07:00

 SaaS型マーケティングオートメーション(MA)ツールを提供する米Acousticは11月1日、日本市場に本格参入することを発表した。システムインテグレーターの日本情報通信が戦略的ビジネスパートナーとして事業の成長を支援する。

 Acousticは、民間投資会社の米Centerbridge PartnersがIBMのWatson Marketing事業を買収する形で設立された新興企業(関連記事)。7月に別会社として独立し、Silverpop、TealeafなどIBMがこれまで買収・統合してきたマーケティング製品を全て引き継ぐことになる。Acoustic 最高経営責任者(CEO)のMark Simpson氏によると、2020年初めに日本法人を設立する計画だ。

Acoustic 最高経営責任者(CEO)のMark Simpson氏
Acoustic 最高経営責任者(CEO)のMark Simpson氏

 同社製品は、キャンペーン管理ツール「Acoustic Campaign」(旧:IBM Watson Campaign Automation)を中核に、コンテンツ管理システム、アナリティクス基盤、パーソナライゼーション機能で構成される。統合型のプラットフォームとなっており、顧客データを集中管理することで、さまざまなツールからでも一貫した顧客像を構築できるという。

 Tompson氏は、Acousticの投資分野として、「人工知能」(AI)、「モダンプラットフォーム」「オープンエコシステム」の3つを挙げる。ワークフローの全ての段階にAIが組み込まれており、使いやすいユーザーインターフェースや企業全体にわたる拡張性をマーケターに提供するという。さらに、マーケターが使用するさまざまなマーケティングツールへの対応も進めるとしている。

Accousticの提供する製品ポートフォリオ
Accousticの提供する製品ポートフォリオ

 日本市場の展開では、IBM時代から継続する形で日本情報通信がパートナーを務める。同社 代表取締役副社長の須崎吾一氏によると、Acoustic(Watson Marketing)関連では、ここ2~3年で10社以上のプロジェクトに関わっているという。

 同社は、ビッグデータの収集から蓄積、分析、施策の実行、効果の可視化、情報保護という一連のマーケティング業務を網羅的に支援できるとし、ツールの熟練度に応じてサービスイン後も継続的にオンサイトやリモートでサポートを提供する体制も整えている。

日本情報通信 代表取締役副社長の須崎吾一氏
日本情報通信 代表取締役副社長の須崎吾一氏

 Acousticの優位性について、須崎氏は、マーケターの活動を一つのプラットフォームで実行できるワンプラットフォームであること、モバイルやウェブなど顧客接点を多くサポートしていること、洗練された使いやすい画面で非IT部門が自ら使えるUIを持っていること、サードパーティーデータ(気象情報など)と連携ができること、顧客の声を最優先にして製品開発を進めていること――などを挙げた。

 会見では、日本の導入企業として、朝日新聞社とオートバックスセブンの事例が明らかにされた。

 朝日新聞社では、本誌購読者、デジタル読者、イベント参加者などの顧客データを各部門でバラバラに保有していたが、これをArm Treasure Dataの顧客情報基盤に集約し、Acoustic Campaignと連携させてデジタルマーケティングの取り組みを本格化させている。セグメントされた顧客への配信メールなどを社内の各部門担当者が自部門で作成し、読者の趣味・趣向に合わせたキャンペーンを提案するなど、顧客体験の向上に役立てているという。

朝日新聞社が構築したデジタルマーケティング基盤のイメージ
朝日新聞社が構築したデジタルマーケティング基盤のイメージ

 オートバックスセブンは、ECサイトにおける顧客行動を補足できないという課題を抱えていた。できることと言えば、会員情報データベースとポイント会員システムから顧客の購買履歴をさかのぼり、そこから担当者が創造力で推測する程度だった。そこで、「Accoustic Experience Analytics」(旧:IBM Tealeaf)で顧客のウェブ行動を補足する仕組みを導入し、離脱の原因となる導線の問題を把握したり、顧客がスムーズに操作できていることを確認したりしている。

 「デジタル変革が叫ばれる中、個々の顧客に満足を得られるようなサービスをデータに基づいて提供し、企業の売上向上や業績拡大に寄与したい。Accousticとともに、日本企業のデジタル変革を支援していく」と須崎氏は意気込みを示した。

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