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クラウド移行の拡大でネットワークへの投資を強化--英コルトのグリブナーCEO

國谷武史 (編集部)

2019-11-07 06:00

 法人向け通信サービスを手掛ける英Colt Technology ServicesのCarl Grivner最高経営責任者(CEO)は、日本やアジア市場における企業のクラウド移行需要や5G(第5世代移動体通信)などの新興市場の醸成に期待を寄せているといい、2020年の経営戦略において投資を強化する方針を明らかにした。

英Colt Technology Services 最高経営責任者のCarl Grivner氏
英Colt Technology Services 最高経営責任者のCarl Grivner氏

 同氏は、2016年頃に立案した、5~7年先を見据えた中長期的な経営方針で、世界的に企業のクラウド移行が本格化すると予想し、データセンターなどへの広帯域接続需要が高まるとして、ネットワークサービスへの投資を継続的に強化してきたと話す。

 「当時の予想に対する現状は期待以上といえる。2016年に『Colt IQ Network』を立ち上げ、2017年にかけてグローバルで帯域を100Gbpsに強化してきた。2019年現在も需要は拡大しており、2020年以降は5GをトリガーにIoTなど新規需要が生じていくだろう」

 この間に同社は、日本市場に対して約600億円規模の投資を計画していたが、現在は1000億円規模に増強しているという。日本での自社設備によるサービス提供エリアは、従来の首都圏や大阪に加え、2017年に名古屋、近年では京都と神戸にも拡大させたほか、東アジア・東南アジア全体でもグローバルネットワークの増強を進めている。

 同社が“攻め”の経営戦略を推進する背景には、法人向けサービスビジネスにおける通信事業者側の姿勢の変化があるという。Grivner氏によれば、当初は各国の通信各社がグローバルビジネスを展開するような法人顧客のネットワークニーズの獲得に注力すると予想された。しかし、「想定よりも各社が法人向けビジネスに進出してきていない。英国の会社も一時はグローバルシェアの獲得を目指していたようだが、現在は英国内のビジネスにフォーカスしてしまっているようだ」という。

 元々同社は金融分野の顧客が多く、世界の金融街を接続する高速の自社ネットワークを強みとしてきたが、現在ではさまざまな業種の企業がクラウド移行に乗り出していることから金融以外にも顧客層が広がり、多業種の企業と彼らが接続する先のクラウドプロバイダーやシステム構築サービス企業なども有力顧客になっている。

 ただ、近年は大手クラウドプロバイダーが共同でネットワーク回線を敷設する動きも進む。これが同社にとって通信領域での競合になるのかを尋ねると、Grivner氏は「彼らがフォーカスするのはあくまでクラウドとデータセンターであり、われわれはそこの間をつなぐネットワークを支える立場にある。彼ら競合ではなく、パートナーであり顧客だ」と話す。

 今後の投資計画では、引き続きネットワークの増強とエリア拡大に注力するが、通信サービスをより簡単に利用できるようにするモバイルアプリの提供やデータと人工知能(AI)技術を活用したサービスの高度化も推進するという。市場では今後も企業のクラウド移行需要が拡大し、2020年以降に本格化すると見られる5G通信の一翼を担う戦略だという。

 なお、英国企業としての同国のEU離脱(ブレクジット)に関する見解は、「(取材時点では延期の方向性が強まっていたが)長らく将来の不確実性が続いており、企業は皆意思決定を遅らせざるを得ないままでいる。2020年以降も影響していくと想定されるだけに、できるだけ早く英国議会に方針を決めてもらうしかない」と懸念材料を示した。

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