SAP、Oracleとの協業で有力なエンタープライズLinuxへ
以上が両社による発表内容の概要だが、今回この話を取り上げたのは、とくにSUSEが目指すエンタープライズLinux市場での勢力拡大につながる動きだと見て取ったからである。
実は、SLESはメインフレームやインメモリデータプラットフォーム「SAP HANA」、ハイパフォーマンスコンピューター(HPC)向けなど、まさしくミッションクリティカルな処理が求められる各市場で、5割から8割の高いシェアを獲得している商用Linuxディストリビューションである。(図1)
図1:ミッションクリティカル市場で利用されるSUSE Linux(出典:SUSEソフトウエアソリューションズジャパン)
なかでもエンタープライズ市場では、図1の左上側に記されている「Linuxで稼働する全SAPアプリケーションの70%はSUSE」という確固たる実績がある。さらに、これがHANAになると90%に跳ね上がるという。SAPは今後、ERPをはじめとしたすべての自社アプリケーションをHANA上で展開していく方針を打ち出していることから、SLESはSAP向けのLinuxとして非常に有望視されている。
こうしたSAPとの密接な関係に加えて、今回、Oracleとの協業によってSLESがOCI上で利用できるようになったことで、SUSE LinuxはSAPとOracleといった2大エンタープライズソフトウェアベンダーのクラウドアプリケーションにおける有力OSとしてグッと浮上したことになる。
これまで同じオープンソース系OSの競合の中でも、日本では今ひとつ目立たない存在だったイメージのSUSEだが、今回の動きを契機にエンタープライズLinux市場の勢力図に変化が起こるかもしれない。