マルチクラウド/エッジ環境を統合--米ボルテラ、分散型クラウド基盤を来春提供

渡邉利和

2019-11-06 11:30

 米Volterraは11月5日、これまで2年にわたるステルス状態から脱し、“マルチクラウド/エッジ環境を統合する分散型クラウドプラットフォーム”として「VoltStack」「VoltMesh」、運用管理インターフェース「Volterra Console」を発表した。現在は限られた先行ユーザーとともにPoC/検証作業を行っており、一般提供は2020年春ごろとなる見込み。

 説明を行った米Volterra 最高執行責任者(COO)のDaniel Hua氏は、同社のミッションを「分散型クラウドの活用により、デジタル/オートノマストランスフォーメーションを加速」することだと紹介した。同氏を含む同社のマネジメントチームはJuniper Networksの出身者でほぼ占められており、米シリコンバレー(サンタクララ)に本社を置くほか、インド(バンガロール)、チェコ(プラハ)、イスラエル(テルアビブ)、フランス(パリ)に研究開発拠点を展開する。日本はアジア圏初の拠点となり、日本市場への強力なコミットメントを表明している。その理由として同氏は、「日本は自動車産業や製造業で有力な企業が多く、それらの企業に認められればグローバルで信頼される」と説明している。

米Volterra 最高執行責任者(COO)のDaniel Hua氏
米Volterra 最高執行責任者(COO)のDaniel Hua氏

 同社のソリューションの基本的な考え方は、製造現場などで活用するためのエッジコンピューティングのためのプラットフォームと、エッジからマルチクラウド環境までを統合的に扱えるようにするためのネットワークサービスや運用管理コンソールを提供するというものだと考えて良さそうだ。

 同氏が具体例として挙げたユースケースでは、例えば、製造現場におけるロボットの制御や、空港などで使われる生体認証技術を活用したセキュリティチェックなど、クラウド側で処理するのではレイテンシー(遅延)が大きくなり過ぎてサービスレベルが低下するような用途に対してエッジでの処理を実現するというもの。さらに、アプリケーションの開発にはクラウドネイティブな技術を活用したいため、Kubernetesをはじめとしたコンテナー/マイクロサービス関連技術をエッジで運用するためのソフトウェアスタックとしてVoltStackが提供され、複数のVoltStackで構成される“クラスター”をクラウド環境まで含めた“フリート”としてまとめるためにSaaSとして提供されるネットワークインフラ「VoltMesh」と運用管理コンソールのVolterra Consoleが組み合わされる、という構造になっている。

Volterraの分散型クラウド基盤の概要
Volterraの分散型クラウド基盤の概要

 位置付けとしては、クラウド環境である「Microsoft Azure」の機能をオンプレミスで運用することができる「Azure Stack」とほぼ同等の位置付けと考えて良いという。Hua氏は「Azure Stackはハーフラックほどの大規模なデータセンター向けシステムで、エッジで運用するには向かない」と語り、VoltStackがエッジ向けにカスタマイズされた環境だとした。なお、VoltStackはソフトウェアスタックであり、“コモディティーハードウェア”で実行可能だが、要望に応じて同社が準備する「インダストリーグレードのハードウェア」を購入することもできるようになるという。

 現在はグローバルでステルスから脱した状態で、正式サービスの開始は日本を含むグローバルでほぼ同じタイミングになる模様だ。価格などの詳細はまだ秋からになっていないが、Volterra Console、VoltMesh、VoltStackの全てが一括で提供され、それぞれの機能の利用量に応じた課金体系が適用される見込み。IT(情報技術)とOT(制御技術)の融合など、従来のITではカバーできなかった産業分野でのデジタル化の取り組みが盛んになりつつあるが、同社の取り組みもその一環として位置付けられそうだ。さらに、ポイントソリューションではなく、エッジからマルチクラウドまでの環境を一元的に提供することで、ITに必ずしも精通しているわけではない産業分野のユーザーにとって導入しやすいソリューションとなることが期待される。

Volterraの分散型クラウドサービスのイメージ
Volterraの分散型クラウドサービスのイメージ

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