AIとIoTでスマートファクトリー化を支援--マクニカとALBERTが資本提携

國谷武史 (編集部)

2019-11-07 12:51

 半導体技術商社のマクニカと人工知能(AI)技術を手掛けるALBERTは11月6日、資本業務提携を結んだことを発表した。AIやIoTを活用した製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進の支援を目的にしている。

 今回の提携でマクニカは、ALBERTの株式を保有するウィズ・アジア・エボリューションファンドから株式の一部となる16万3000株を市場外の相対取引で譲り受ける。また、ドイツのSiemensが運営する製造向けIoTクラウドプラットフォーム「MindSphere」をベースにしたマクニカの製造業向けプラットフォームでアプリケーションを共同開発していくほか、製造業顧客に対する個別AIプロジェクトでのコンサルティングやデータ分析、アルゴリズム開発、システム実装などのサービス提供、AIに関する市場への啓蒙活動にも当たっていくとした。

資本業務提携を発表したマクニカの佐藤氏と原氏、ALBERTの松本氏と安達氏(左から)
資本業務提携を発表したマクニカの佐藤氏と原氏、ALBERTの松本氏と安達氏(左から)

 同日の記者会見でマクニカ 代表取締役社長の原一将氏は、センシング技術の高度化やIoT機器の拡大、AI・ビッグデータの解析、5G(第5世代移動体通信システム)の到来などが製造業のDXを推進する追い風となり、「今回の提携は絶好のタイミングだ」と語った。同社は既に200件以上の案件を手掛けており、「幅広い産業領域でAIの実装と活用を推進するALBERTと製造業のDXを支援し、スマートファクトリーを推進していく」(原氏)と強調した。

 マクニカは、1月にAI関連事業を第三の成長分野に位置付ける経営戦略を発表。「macnica.ai」のブランドで製造業向けにエンドツーエンドのソリューションと、小売/介護業界などにはクラウドのAIサービスを提供している。今回は製造業向けの施策に当たり、イノベーション事業戦略本部長の佐藤篤志氏は、「スマートファクトリー化でAI技術を活用するには、正しい学習データが重要であり、これまで半導体事業で培ったセンシングやエッジコンピューティング機器『SENSPIDER』などを活用する。ここにALBERTのAIの知見を取り入れ、エッジとクラウドでも利用したフィードバックループを回すことにより、スマートファクトリー化を推進したい」と述べた。両社ではAI活用を期待する製造業の顧客に対して「相談員」を派遣し、ニーズの具現化からシステム実装までの広範な内容に対応していくという。

IoT・クラウド・AIによるソリューションのイメージ
IoT・クラウド・AIによるソリューションのイメージ

 なお、両社は2017年から業務提携しており、今回の資本提携でこれを一層強化していく。ALBERT 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の松本壮志氏は、協業の意義について、「当社は産業分野で実装されるAIの受託開発を主力にしているが、今回の提携を通じてニーズが顕在化したプロジェクト案件でのシステム実装まで一気通貫で対応できる体制が整う」と説明する。

 同社は「CATALYST(触媒)」と呼ぶ事業戦略を推進し、産業横断型の協業体制を拡充させてきた。これまでトヨタ自動車や東京海上日動、三井住友銀行、KDDI、日本ユニシスと協業しており、今回は製造分野でマクニカと提携する形になる。ALBERT 執行役員CDO(最高デジタル責任者)の安達彰浩氏は、「マクニカとの提携により営業や販売、システムインテグレーションまでをカバーできるようになる」とした。

 協業について当面は体制の整備や顧客密着型の活動に注力する。マクニカはAI関連事業で300億円規模の売り上げを計画しているが、マクニカの原氏は、「今回の協業を通じて3~5年後にはさらに100億円規模の売り上げを上乗せできるようにしたい」と目標を語った。

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