デルのサーバーCTO陣に聞く、サーバー開発方針の現在 - (page 2)

國谷武史 (編集部)

2019-11-13 06:00

自動化への“旅路”

 サーバーに対する要求項目を挙げれば切りがないが、現状においてHormuth氏は、特にセキュリティと高性能化に伴う消費電力の増大が最大の懸念事項だと指摘する。「セキュリティの脅威が高まっているし、処理能力への飽くなき要求はデータセンターの電力問題に直結する」(Hormuth氏)

 同社の対応としては、セキュリティの一例ではファームウェアの厳格な認証と検証による不正プログラムの侵入の排除があり、性能面では「Dell Processor Acceleration Technology(DPAT)」によるきめ細かいコア制御などを通じた消費電力の抑制がある。また、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けハイエンドモデルを中心とした液体冷却技術の採用なども推進している。

 これらに加え、今後のキーワードに挙げるのが「自動化」だ。ハイブリッド/マルチクラウドやワークロードの広がりに伴ってシステム環境はより複雑になっていくと予想されることから、同社では「自動化」への取り組みを加速させようとしている。

 「顧客の同意をもとに、約400種類のデータポイントからテレメトリー経由で収集するストリーミングデータを蓄積し、分析と解析を通じてその内容の可視化とパターン化を進めている。現状では、まだイベント対応の段階的な自動化にとどまるが、最終的にその大部分を自動化したい。さらには、クラウドのサポートシステムなどを通じてサードパーティーを含むあらゆるシステム製品のデータを一元的に利用し、故障の予兆検知など、現在の事後対応から予見可能なシステム管理を実現する」(Rao氏、Bracalente氏)

 現在は、米テキサス工科大学のハイパフォーマンスコンピューティングセンター(HPCC)や複数の顧客企業と共同で、複数の大規模クラスターの膨大なストリーミングデータを収集し、分析を通じて可視化を試みる共同プロジェクトを進めている。HPCCには、2017年に構築された「Quanah」と呼ばれる467ノード/1万6812コアのクラスターと、2011年に構築された「Hrothgar」という630ノード/8246コアのクラスターがあり、「PowerEdge C6300」や「Dell Linux」などのシステムで構成される。「これは、新しいITインフラにおけるデータ可視化の方法を探索するものになる」(Rao氏)

テキサス工科大学らとの共同プロジェクトにおけるデータ可視化のデモ
テキサス工科大学らとの共同プロジェクトにおけるデータ可視化のデモ

顧客は市場の競争を望んでいる

 また、直近のサーバー市場トレンドの1つにAMDプロセッサーの“復権”が注目されている。サーバーベンダー各社が「AMD EPYC」搭載モデルを投入し、同社も現時点で投資を強化しているという。

 「第一世代のEPCY(コードネーム:Naples)でわれわれは3モデルを投入したが、第二世代(同Rome)では5モデルに拡大させた。現時点で顧客の評価は非常に良い。ただ、これが長期的に続くものかは分からないし、技術的な観点からいえるのは、どこかが頭一つ抜け出すようなことにならない」(Hormuth氏)

 Robert氏は、少なくとも顧客にとっては、市場で競合状態が続く方がより多くのイノベーションが生まれるため、この動向を好意的に捉えている。「『AMDが復権』と騒がれるのは、現在の顧客ニーズへ適切に対応しているからだろう。メニーコア化やメモリ帯域の拡張など、興味深いタイミングではある」(Robert氏)

 Rao氏によれば、現状でTire 3データセンターの顧客においては、メリットとリスクを観点からAMDのサーバーに移行する動きが出ているという。

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