マネージドクラウドサービスプロバイダーを活用すべき4つの理由 - (page 2)

Danny Allan (Veeam Software)

2019-11-18 07:00

3.優れた顧客体験を可能にする分散ネットワークモデルを提供できる

 ITの基本原理のひとつは、ネットワークが重要だということです。帯域幅、またサービスを提供する側と利用する側の遅延(レイテンシ)は、誰も逃れることのできない制約条件です。

 帯域幅を増やすことは予算に糸目をつけなければ可能ですが、レイテンシについては、光速をさらに加速することはできません。このために、コンテンツ配信網(CDN)などの技術が生まれました。集中型のハイパースケールクラウドサイトから多数の拠点への一斉データ送信で物事がうまく進めばCDNの必要はありませんが、現実としてCDNは注目され、これからも注目され続けていきます。

 その理由は、優れた顧客体験を提供するにはネットワークの高速化が重要であり、分散モデルがネットワークの高速化に適しているからです。ハイパースケールパブリッククラウドプロバイダー各社は、この点を認識していて、クラウドの機能を限定的にせよエッジに、つまり顧客データセンターあるいは地域的なパートナーに配置するサービスを提供し、レイテンシを改善することに成功しています。

 しかし留意すべきは、確かにレイテンシ改善はできますが、クラウドの分散化は、規模の経済により価格を下げようとするハイパースケールパブリッククラウドのビジネスモデルとは相いれないということです。言い換えれば、MCSPにとって、高度に集中化されたパブリッククラウドを分散ネットワークと結合したサービスを提供することでユーザー企業の満足を高められるという、ビジネスチャンスが生まれます。

4.ユーザー企業の本業集中を加速できる

 企業が衰退する原因の一つは、本業をおろそかにすることです。そうした企業は、自社の能力をわきまえず、あまりにも多くのことを、あるいは本来するべきでないことも、同時に管理、実行しようとします。

 IT面で考えてみると、MCSPと協力することで、ユーザー企業はサービスレベル合意書(SLA)が保証されたITサービスを外部から受けられるようになり、その分、自社の貴重な内部リソースを本業に集中できるようになります。

 一昔前は、メールや通信サービスなどの基本的なIT機能を自社で抱えている企業が珍しくありませんでしたが、今や信頼できるパートナーからサービスとして提供されることが当たり前となりました。このようなモデル転換をインフラストラクチャとプラットフォームサービスでも行うことでビジネスプロセスを改革できます。

 MCSPをパートナーとすることで、企業はコアコンピタンス実現に集中でき、ビジネスの自由度が広がります。

 世界がクラウドによる変革を遂げていることは疑いありません。しかし、この変革の行き着く先では、企業のシステム投資がすべてハイパースケールパブリッククラウドを前提とするようになると考えるのは、誤りです。ユーザー企業のビジネスを熟知した上でサービスを提供するMCSPが、より賢明な選択肢であり続けることに疑いはありません。

Danny Allan(ダニー・アラン)
Veeam Software製品戦略担当バイスプレジデント
製品やソリューションの戦略構想、設計、市場への浸透を管掌。また、大規模なユーザーと大規模なサービスプロバイダーとの協業により、長期的なウィンウィンの関係構築を進めている。20年の技術経験を持ち、ユーザー企業の問題解決とソフトウェアの革新に注力している

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