Dell Technologiesは11月12日、米テキサス州オースティンでプレス/アナリスト向けカンファレンス「Dell Technologies Summit」を開催した。例年5月に年次ユーザーカンファレンス「Dell Technologies World」が開催されているが、今回のSummitは従来の年1回の機会を半年に1回へとサイクルを短縮する狙いがあるとのことで、今後定例化されることが見込まれている。
イベント開催に合わせて、大きく3つの発表が行われた。新しいコンバージドインフラ(CI)製品「Dell EMC PowerOne」、消費モデル「Dell Technologies on Demand」、そして2030年に向けた各種社会的責任に関する取り組みの表明となる。
午前の基調講演に登壇した同社の会長兼最高経営責任者(CEO)のMichael Dell氏は、テクノロジーの進化がより良い社会を実現していくという“楽観主義”に立つと同時に、データがさらに増大し、さまざまな意思決定がデータに基づいて行われるようになる「次のデータの10年(Next Data Decade)」に向けた取り組みとして新たな発表内容を紹介した。
Dell Technologies 会長兼最高経営責任者(CEO)のMichael Dell氏
まず、新製品となる「Dell EMC PowerOne」は、構成要素となるサーバー、ストレージ、ネットワークの全てに同社製品を使って構成されたCI製品となる。先行製品となる「VxBlock」が元々は「VCE」と呼ばれたVMware、Cisco、EMCの3社協業の成果として生まれたもので、ネットワークスイッチとサーバーにCisco製品が使われているのに対し、PowerOneではPowerEdgeサーバー、PowerMaxストレージ、PowerSwitchネットワークスイッチが組み合わされる点が違いとなる。
特徴としては、運用管理面で高度な自律機能を実装している点で、従来人手で実行されていた運用管理作業の98%が自動化されるとも言われる。これを実現するのは「PowerOne Controller」でハードウェアとしては専用に用意されたPowerEdgeサーバー(オンボードアプライアンスと表現される)で実行されるソフトウェアだが、現時点ではソフトウェア単体での提供はない。システムの運用状況を監視し、あらかじめ準備された「正常なシステムが示す振る舞い」のデータとの比較から異常を検出したり、適切な対応を提案したりといった形で運用管理の多くの部分を自動化する。KubernetesベースのコンテナーアーキテクチャーやAnsibleによるワークフロー機能が組み込まれているとされる。
Dell EMC PowerOne
関係者のコメントでは、VxBlockがエンタープライズ向けであるのに比べ、PowerOneは中堅中小企業(SMB)での活用を想定しており、今後も併売されていく予定だ。
また、消費モデル(Consumption Model)として提供される「Dell Technologies on Demand」では、新たにPowerEdgeサーバーのCPUサイクルベースでの利用量課金がサポートされることが発表された。消費モデルでの提供は、従来EMCのストレージ製品などで提供されていたものだが、これがDellサーバーにまで拡張された、と見ることもできるだろう。両社の統合がより深まっている現状を反映したものとも言えそうだ。
主な狙いとしては、ユーザー企業が「テクノロジーを消費」する際の“選択肢”、“柔軟性”、“成果の予測性(Predictable outcomes)”を提供することだという。提供モデルとしては、「Pay As You Grow」「Flex on Demand」「Data Cener Utility」の3種類が用意される。
Flex Utilityはいわゆる「従量課金モデル」に相当するもので、PowerEdgeサーバーの場合はCPU、ストレージ製品の場合はデータ量を測定し、“使った分だけ支払う”という形になる。また、Data Center UtilityはITインフラ全体を対象とした大規模なモデルと位置付けることができるだろう。一方、Pay As You Growはこうした「測定値をベースとした課金額決定」とは異なるモデルだ。あえて言うなら、日本語で昔から使われている表現である「出世払い」のイメージに近い。
例えば、ソフトウェア開発環境をイメージした場合、ソフトウェアが完成すればその収益が「インフラを利用することで生まれた利益」として計上可能になるが、開発中の段階ではインフラコストが支出されるのみで収益は生まれない期間が続くことになる。Pay As You Growは、こうした収支のアンバランスな状態に対応するプランで、ユーザー企業とDell Technologiesの交渉で支払いパターンが決定されるという。なお、いずれのモデルでも、製品/システムはユーザー企業の資産としては計上されず、Dell Technologiesの資産のままで、必要に応じてユーザーサイトに置かれることもある、というモデルになる。
Michael Dell氏が強調していたのは、Dell Technologiesが今後果たしていくべき社会的責任についてだ。具体的には、リサイクル/リユースに関する取り組みの強化から人事面での多様性向上プログラムまでさまざまな取り組みについて、2030年までの野心的な目標が“Moonshot”として語られた。
デジタル変革(DX)時代を迎え、ITは単にIT業界自体やインターネット関連企業だけの問題ではなく、あらゆる業種業態、さらに社会全体にインパクトを与えるものとなってきている。これはつまり、ITのイノベーションを手がける企業はその活動が社会全体に影響を与えるという自覚のもとに事業に取り組むことが求められる時代になったということになるだろう。
同氏は「社会全体のより良いあり方」といった視点に基づいて未来を語ることが多い人だったが、それは同氏が以前からこうした変化に自覚的であったということであり、時代がいよいよ同氏の認識に追いついてきたということの表われなのかもしれない。
(取材協力:デル)