新潮流Device as a Serviceの世界

サービスとして提供する仕組み--「as a Service」とは?

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2020-01-06 12:42

 本連載の中心テーマである「as a Service」とは、そもそも何でしょうか。直訳すると「サービスとして」という意味です。SaaSなら「サービスとしてのソフトウェア」、DaaS(Device as a Service)なら「サービスとしてのデバイス」となります。今回は、この「as a Service」についてのお話です。

 前回お話した通り、SaaSは利用者が手元にソフトウェアをインストールするサーバー機器を持たず、その構築や運用の手間から解放され、ソフトウェアを利用するための負担を大きく軽減させました。ソフトウェアは、その開発元あるいは代理者などによって運用された状態で利用者にサービスとして提供されます。これが「as a Service」と言われるゆえんです。

 それでは、DaaSはどうでしょうか。SaaSと同じように、手元にあるもの(=PC)を待たずにクラウドに持っていくといっても、そもそも手元にPCがなくなってしまえば、人間はシステムにアクセスすることができません。当然、SaaSさえ利用できなくなってしまいます。

 米国では、人間の脳とコンピューターが直接通信をする「Brain-Computer Interfaces(BCI)」というものが研究されているそうですが、まだ研究段階で実用化されていません。それをDaaSに必要な技術だと私がここで説いたら、たぶん今回で連載を打ち切られてしまうでしょう……。(いろんな意味で)システムへアクセスするのにPCが必要なくなれば、確かにPCの運用もいらなくなるでしょうが、それはまだ遠い未来のお話です。

 実は、ソフトウェアでもクラウドからサービスとして提供すること(SaaS化)が容易ではないものもあります。それは、PCにインストールして使うWindowsネイティブなソフトウェアであり、その代表格がMicrosoftの「Office」です。昔から世界中の業務環境で使われてきたこの伝統的なWindowsネイティブなソフトウェアは、PCにインストールしてセットアップし、定期的にアップデートする運用が必要です。それは、PCを通じて行うものであり、サーバーと違ってクラウドに持っていくことができません。歴史的な積み上げもあり、ソフトウェアのサイズも大きく、インストールやアップデートには労力がかかります。

 一方でSaaSのアップデートは、サービス提供事業者がクラウド上で作業するだけです。顧客たる利用企業に負担をかけることがありません。そのためSaaSは、アップデートサイクルを劇的に短くすることで、顧客へ提供する価値(例えば、新機能による作業の効率化など)を短期間で高めることが可能です。おそらく、これに焦りを感じたMicrosoftは、WindowsネイティブなOfficeをSaaSにすることを決意します。

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