企業が集めている情報はますます増えているが、多くの企業はそのデータの生かし方を知らない。
コンサルティング会社のMcKinseyが述べている通り、実際に情報から有意義な知見を引き出し、知識を行動に結びつけることはそう簡単ではない。
セキュリティ企業Gemaltoが発表した「Data Security Confidence Index」によると、企業の3社に2社(65%)は、収集したすべてのデータを分析することはできていない。また、テクノロジー業界を専門とする調査会社Forresterは、企業が持つデータの60~73%はアナリティクスに使われていないと指摘している。
企業が集めたデータを最大限に活用するには、どうすればよいのか。この記事では、3人のデジタルリーダーに、「興味深い情報」を「意味のある知見」に変えるためのベストプラクティスを聞く。
全方向的な顧客像を得るために社内の専門家を集める
英国の大手スーパーSainsbury'sの最高データ、アナリティクス責任者(CDO)Helen Hunter氏は、同社は「気が遠くなるほど」の量のデータを持っていると話す。Hunter氏は、素早く、簡単に、そして低コストに正確な情報を供給することに力を入れている。しかし、大企業ではありがちな話だが、大手小売企業であるSainsbury'sにはグループ内に複数のブランドがあり、同社のデータは業務やブランドにロックインされてしまう傾向が強いという。
「その状況を変えて、データを大衆化しようとしている」と話すHunter氏がデータの責任者に就任したのは、2018年4月のことだ。「わが社は常に、どうすればデータを生かしてチャンスを作れるかと自問自答している。業務をどう改善できるか、どうすれば顧客により良いサービスを提供できるか、意思決定の方法をどう変えるべきかを考えている」
最近ロンドンで開催された「EARL Conference」で講演したHunter氏は、今進めているデータを大衆化するプロセスで最重要の要素は、最近立ち上げたSainsbury'sの技術部門だと語った。この組織は、従来は「Habitat」「Argos」「Sainsbury's Bank」などの同社が持つ各ブランドだけに関わっていた技術者を、初めて1つの部門に集めて作られたものだ。
「デジタル時代にふさわしいサービスを顧客に提供するには、マルチチャネル、マルチブランドの機能が必要で、そのためにすべての技術者を1つの部門に集めた」とHunter氏は言う。「それが重要だったのは、利用しているブランドやチャネルにかかわらず、顧客を全方位的に分析できるようにしたかったからだ」