Hunter氏によれば、この全方位的な顧客分析を実現できるかどうかは、3つの戦略的要素にかかっているという。第1は、データにいつどこからでもアクセスできるようにすること。第2は、従業員がデータを利用して知識を身につけられるよう、従業員を支援すること。第3は、複雑な業務の中で、人間が意思決定を行う部分を減らすことだ。同氏は、この3つに対して戦略的なアプローチを取ることが、Sainsbury'sが情報を活用するために役立つと話す。
「わが社は、データを一部の人間だけではなく、全員にアクセス可能で、有意義で、見えるものにするという困難な仕事に取りかかり始めた」とHunter氏は言う。「顧客をもっとよく知り、そのニーズに先回りして応えるためには、予想する能力を今よりも高めなければならない。それには、意思決定を今よりも最適化していく必要がある」
組織全体にデータ重視の考え方を行き渡らせる
Trainlineの最高技術責任者(CTO)Mark Holt氏も、組織内のデータ収集プロセスの規模を理解しており、その「宝の山」を利用すれば、ライバルに対して優位に立てると考えているデジタルリーダーの1人だ。Trainlineは、英国などで電車や長距離バスによる移動のための最適な経路検索やチケット予約を行うサービスを提供している。
「わが社には巨大なデータストアがあり、私は、多くのデータを持っている企業ほど、勝てる可能性が高いと考えている。このデータ資産を、顧客のためにもっと多くのサービスを作るために使いたい」と同氏は話す。
データドリブンな組織を目指すのは賞賛すべきことだが、Harvard Business Reviewの記事によれば、多くの一流企業が、データドリブンの組織を作ろうとして失敗している。この記事では、その根拠として、NewVantage Partnersが発表したレポート「Big Data and AI Executive Survey 2019」の数字を引用している。これによれば、企業幹部の69%が、データドリブンの組織を作ることができていないと回答したという。
Trainlineにとって幸いなのは、同社がすでにデータをビジネスの中心に据えているということだ。データ主導で取り組みを発展させてきた結果、今では1日17万2000人以上の鉄道や長距離バスの利用客が、賢く旅行するために同社のサービスを利用するようになった。
Trainlineのアプリには、リアルタイムデータを活用したさまざまな機能が搭載されている。価格予想ツールは、過去のトレンドを分析して、チケットを予約するのにもっとも有利な時を提示してくれる。また、鉄道旅行計画ツールは、顧客がより安価な旅程を組むのを手助けするものだ。「BusyBot」機能は、何千人もの乗客からクラウドソーシングでデータを収集することで、空席の有無に関する情報を提供している。