ガートナージャパンは、11月に開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」において、ブロックチェーンを活用したビジネス動向に関する説明会を行った。今後は、ブロックチェーンの特徴であるトークン化と非中央集権化の要素を備えたユースケースが増えてくるという。米Gartner ディスティングイッシュトバイスプレジデント アナリストのDavid Furlonger氏が説明した。
Furlonger氏は、ブロックチェーンが備える要素の多くを説明できる事例として、UEFA(欧州サッカー連盟)のチケット販売システムを取り上げた。チケット販売の課題は、インターネットで販売したチケットを最終的に誰が使うのかが分からないことにあり、顧客を把握していないと、顧客にロイヤルティーを提供することができない。
これに対してUEFAは、モバイルアプリをリリースした。アプリには個人認証の仕組みがあり、UEFAは顧客とのつながりを構築できる。ウォレット機能もあり、チケットをウォレットに配信できる。ここにブロックチェーンを活用しており、来場者の1人が観戦に来られない時には、アプリの登録者同士でピア・ツー・ピアによりチケットを譲ることができる。個人を特定できるため、来場に合わせて商品を案内するなどのリワードを提供できる。
UEFAは元々中央集権型の組織だった。ブロックチェーンを活用したモバイルアプリを提供することによって、価値の交換といった意思決定を顧客に任せることができるようになった。
トークン化と非中央集権化がブロックチェーンの命

米Gartner ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリストのDavid Furlonger氏
ガートナーでは、ブロックチェーンに5つの構成要素があると定義している。(1)ピア・ツー・ピアでつながる分散型のアーキテクチャー、(2)機密性を保つための暗号化、(3)データが書き換わらない不変性――まずは、この3つの要素を持つものが「分散型台帳」と呼ばれる。
ただし、分散型台帳の3要素がそろっているからといって、ブロックチェーンとは呼べないとFurlonger氏は指摘する。そこで、残りの2つの要素がブロックチェーンを特徴付けている。(4)任意の資産をトークン化して配信できること、(5)トークンを任意の相手に送信する際に中央集権組織が関わらない非中央集権化――である。
「ブロックチェーンの定義を理解することは重要だ」と、Furlonger氏は力説する。背景には、巨大な力を持つ大手企業が市場を制御している現実がある。巨大なプラットフォーム企業がデータを収集し、消費者を囲いこむ。これによって、消費者は自分で意思決定を下すことが難しくなる。
一方、ブロックチェーンには分散型のアーキテクチャーとトークン化の要素があるので、非中央集権化を達成できる。「(分散型台帳としての)3つの要素だけでは、非中央集権化は十分に進まない。トークン化と非中央集権が実現できれば、ブロックチェーンが完成する。2020~2030年頃に企業が利用し始めるだろう」(Furlonger氏)。
現状では、ブロックチェーンの成熟度は、想定されたほどには進んでいないという。「ブロックチェーンを導入済み」と称している企業も、その活用については不十分であり、トークン化や非中央集権化までには達していない。現状では、同じ目的をブロックチェーン以外の別の技術で実現できる事例がほとんどだ。