日本オラクルは11月13日、日本の「職場におけるAI(人工知能)」に関する調査結果を公表した。世界の10の国と地域の中で日本は、職場におけるAIの利用で最下位。一方、「マネージャーよりもロボットを信頼する」割合は平均を上回ったという。
同調査は、Oracleと調査会社であるFuture Workplaceが共同で実施。米国、英国、フランス、中国、インド、オーストラリア/ニュージーランド、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、ブラジル、日本の企業や団体の従業員、マネージャー、人事部門リーダー8370人(うち日本は415人)が回答したもの。
今回の調査結果において、グローバルで見られる傾向の1つとして、AIが職場における人とテクノロジーの関係性を変えていることがあるという。
原智宏氏
日本オラクルで執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部長を務める原智宏氏によると、50%の従業員は職場で何らかの形でAIを利用しており、国によっては2018年に比べて2倍以上となっているという。
65%の従業員は、ロボットの同僚を楽観的に捉え、関心が高く、感謝もしている。そして、64%の従業員は、マネージャーよりもロボットを信頼しており、半数はマネージャーではなくロボットにアドバイスを求めているという。
人間の上司を信頼しない日本
これに対して、日本だけではどのような傾向が見られるか。慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授の岩本隆氏が説明した。
岩本隆氏
日本の場合、職場で何らかの形でAIを利用していると回答したのは29%で調査対象の中で最下位。ただし、必ずしもAI活用が遅れているというわけではないと岩本氏は付け加える。日本企業の場合、顧客に提供する自社のビジネスや商品で進んではいるが、人事や総務といったバックオフィス部門で遅れているという。
職場でのAI活用が進んでいるインド(78%)や中国(77%)では、日本と比べ、AI活用で重要となるデータに関する倫理観が「少し緩い」ということがある一方で、数学などが強い国ということもあり、AIテクノロジー活用への意識に差があるのではと岩本氏は考える。
職場でのAI活用が進んでいないことから、AIを実装するスキルを持つ職場の比率も日本は36%で最下位となっている。岩本氏によると、日本企業の場合、技術部門にはデータ専門家がいるが、バックオフィス部門にはテクノロジーが分かる人材がいないことが多いという。そのため、職場でAIを何に、どう活用すべきかを検討、導入するスキルがないことが考えられると同氏は述べた。
日本の場合、マネージャーよりロボットを信頼するとの回答は76%とグローバル平均を上回った。この日本の結果は、マネージャーが信頼されていないことの裏返しと言えると岩本氏。その原因として、年功序列でマネージャーに昇格させる日本企業では、ピープルマネージメントのスキルが高くない人材でもマネージャーになることが多いため、部下の不満となっていることが挙げられるという。