「戦後日本は、年功序列の仕組みで成長してきたが、産業構造が変わってきた。特に、製造業の量産工場を持っている企業だと年功序列が機能したが、今、自動車を除いて日本の製造業はほとんどアジアに流出し、残ったサービス業を中心とした産業構造では年功序列はなかなか機能しない」と岩本氏は述べ、「今までは、年功序列で経験が積んだ人がマネージャーになっていた。いわゆるマネージメントのスキルがない人でも年配であるというだけで、マネージャーになる。今の若い人から見ると不満が多いのでは」と続けた。
ロボットはマネージャーよりも何が優れているのかという質問については、バイアス(偏見)のない情報の提供が53%、仕事のスケジュールの維持・管理が47%、予算管理が43%で、グローバルより比率が高かった。このことから、日本企業では、マネージメントが論理的あるいは合理的になされていないのではと岩本氏は推測する。
「しっかりデータを活用して合理性を持ったマネージメントがなされていないことによって、感覚で部下を指導している。結果的に、働き方の効率が悪くなっている」と岩本氏。「マネージメントが100%データでできるわけではないが、あまりにも合理性がなさ過ぎるというのが日本の現状」(同氏)
マネージャーはロボットよりも何が優れているのかという質問については、従業員の感情の理解(53%)、従業員の指導(47%)、職場文化の創出(43%)が上位3つを占め、グローバルとほぼ同じだった。
その一方で、権限移譲は、グローバルで21%だったのに対し、10%と半数以下。日本のマネージャーが権限移譲できないことから、仕事の効率が全体として悪くなっていることが示唆される。また、「コンフィデンシャルな質問を恐怖心なしに行える」という質問の回答は、グローバルの16%に対して、日本は6%であり、マネージャーへの信頼が薄いこともうかがえるという。
AIの活用によってもたらされる機会としては、日本はグローバルに比べて自由時間が増える(42%)ことへの期待が高い。だが、給与が上がる(7%)ことや昇格スピードが速くなる(4%)ことは、グローバルと10%以上の差があった。そのことから、AI活用がこれらのことに反映されるというイメージが日本ではまだわいていないのではと岩本氏。
「本当の意味で生産性が上がれば、こういったことにも反映されるようになるはずなので、AI活用が進んでいない今の状況では、このような結果となる」(岩本氏)
バックオフィスにおけるAI活用が進む場合、次の段階を経て、目指す姿である「次世代のバックオフィス」へと向かうと岩本氏は述べる。
- Data:データを収集、入力して合理性を高める
- Insight:データからのインサイトを生かし、人は人でしかできない仕事にシフトする
- Prioritization:AIからの結果に経営の意思や考え方を融合する
- Recommendation:AIを高度化し、より精度の高い経営判断につなげる

「日本のAI活用としては、データの収集と入力が進んでいない企業が多いのが現状だが、これを進めることによって合理性を高めることができる。合理的な判断ができるところはAIなどのテクノロジーを活用して、マネージャーは人でしかできないことで付加価値を出すことが求められていく」ようになり、最終的な段階においては「AIができないことをさらに高度化することで、企業全体のマネージメントが高度化する」と岩本氏は説明する。