世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかるとされる処理を、200秒で実行できるという量子コンピューターの話題であふれているが、ほとんどの場合において、スーパーコンピューターは何よりも速いというのが純然たる事実だ。そして、最新のスーパーコンピューターランキング「TOP500」では、ランキング最下位レベルでも処理速度が驚きの1.14ペタフロップスに達している。
ランキングの上位は、2019年6月のリストから変わっていない。首位は米オークリッジ国立研究所の「Summit」で、「High Performance Linpack」(HPL)のベンチマークで148.6ペタフロップスの記録をたたき出した。SummitはIBM製のスーパーコンピューターで、CPUに「IBM POWER9」、GPUに「NVIDIA Volta GV100」を使用している。
2位はやはりIBM製マシンであるローレンスリバモア国立研究所の「Sierra」だったが、性能にはかなり差がある。SummitとSierraは同じチップを使用しているが、こちらの処理速度は94.6ペタフロップスだ。
僅差での3位は「Sunway TaihuLight(神威・太湖之光)」で、93.0ペタフロップスだった。神威・太湖之光は中国の国家並列計算機工学技術研究センターが開発したもので、江蘇省無錫市の国立スーパーコンピューターセンターに設置されている。プロセッサーには独自開発の「申威26010(SW26010)」が使用されている。
4位の「Tianhe-2A(天河二号)」は、中国人民解放軍国防科学技術大学(NUDT)が所有し、広州の国立スーパーコンピューターセンターに設置されている。61.4ペタフロップスの性能を備え、Intelの「Xeon」「Matrix-2000」プロセッサーで構成されている。
初めてリストに登場したスーパーコンピューターの中でもっとも高速だったのは、米レンセラー工科大学のCCI(Center for Computational Innovations)が持っている「AiMOS」だ。AiMOSは8.0ペタフロップスの性能で24位にランクインした。これもIBM製のシステムで、SummitやSierraと同じく、CPUにPOWER9、GPUにNVIDIA Volta GV100を使用している。
中国が開発する高速なスーパーコンピューターは引き続き増えており、今やTOP500の半数近く(227台)が中国のマシンだ。一方、米国製のシステムの数は、過去最低に近い118にとどまっている。とは言え、平均で見れば米国のシステムの方がはるかに大型で高速だ。そのため、パフォーマンスの合計では、米国のスーパーコンピューターがTOP500の37.8%を占めている。パフォーマンスにおける中国のシェアは、僅差の31.9%だった。
TOP500では上位の順位に変わりはなかったが、「Green500」では変化があった。Green500は電力効率が高いスーパーコンピューターのランキングだ。新しい首位は、「A64FX」を使用した富士通らのスーパーコンピューター「富岳」のプロトタイプで、性能は消費電力1ワット当たり16.876ギガフロップスだった。また、わずかな差で後塵を拝し、2位となったのは、PEZY Computingのプロセッサー「PEZY-SC2」を搭載したZettascalerシリーズのスーパーコンピューター「NA-1」で、1ワット当たり16.256ギガフロップスだった。これらはどちらも日本のマシンだ。
3位にランクインしたのは前述のAiMOSで、速さと電力効率が両立できることを証明した。
高速なコンピューターを作るには高速なチップが必要だが、重要なのはプロセッサーだけではない。CPUが高いパフォーマンスを発揮するには、データも高速にやりとりする必要があるためだ。TOP500の52%(258台)ではインターコネクトにイーサネットを使用しているが、「InfiniBand」も採用されている。TOP500のうち140台のスーパーコンピューターでInfiniBandが使われている。しかし性能では、パフォーマンスの合計でInfiniBandの方が上回っている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。