UACJなど4社によるこうした動きの背景には、近年になって国内の訪問医療増加や在宅医療利用者数の増大による医療費の増加が問題になっていることがある。また、残薬の増加も医療費の増加に拍車をかけている。こうした課題に対し、処方されている薬を過不足なく服薬してもらうために開封の有無を管理できる包装材を開発し、4社で新たなシステムについて共同研究する運びになったという。
DX推進で異業種間連携は当たり前に
4社それぞれの役割としては、UACJおよびUACJ製箔は開封検知付きアルミ箔の開発、製造を行う。SAPジャパンはそのデータ収集、解析を行うシステムに、開発環境の「SAP Cloud Platform」および分析ソフトウェア「SAP Cloud Analytics」を提供。さらにユーザーからのフィードバックを取得するソフトウェア「SAP Qualtrics」を提供する。
また、ドクターズは、独自ガイドラインによる現在約400人からなるエキスパート医師チームと、デジタルプラットフォーム活用支援を融合した「Doctors Cloud」のサービスを提供し、実証試験プロトコールの立案と運営、医療従事者の意見の集約化とフィードバックを行うとしている。(図2)
図2:実証試験のスキーム
以上が異業種間連携による共同研究の発表内容だが、筆者が今回この話を取り上げたのは、いわば異業種間連携によるIoTを始めとしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みである今回の動きに、DXならではの新たな息吹を2つ感じたからだ。
1つは、UACJとSAPジャパンが共同研究を行うことになった経緯である。SAPジャパンの松井氏によると、同社がこのところ注力しているDX支援に向けたデジタルエコシステムの活動にUACJが賛同し、その中のコミュニティに同社が参加したことがきっかけになったという。これまではもともとSAPの統合基幹業務システム(ERP)ユーザーであることが、次につながる場合が多かったが、これからは今回のようなDXの取り組みが“出会いの場”になるケースが増えてくるのではないか。
そしてもう1つは、今後こうした異業種間連携による共同研究および協業の発表が増えてくるのではないか、ということだ。さまざまな業種の企業におけるDXの取り組みに、DX支援を行うITベンダーがパートナーとして組むという構図だ。その意味では、「異業種間連携」は当たり前である。
加えて言えば、記者会見も医薬や材料系のメディアが多く、筆者にとっては新鮮だった。これもDXならではの新たな息吹といえそうだ。