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アジャイル開発を加速させるローコード技術の衝撃

第2回:工数削減に伴う少数精鋭化の脅威 - (page 2)

松岡真功、渡辺幸三

2019-11-22 07:00

少数精鋭体制に対応せよ

 工期が変わらず工数が減ることによって、必然的にプロジェクトは少数精鋭化する。そのためにまず開発企業は、従来のような工数が多いほど儲かるビジネスをあきらめなければいけない。これまで一次請けの業者がまい進してきたことは、ほとんどのプロパー(自社要員)に開発実務の訓練を施さずに「外注管理要員」に仕立て上げることだった(何という社会的損失だろう)。膨大な工数を賄うために大量の開発要員を外注してマージンを確保しつつ、プロパーをプロジェクトマネージャーという名の外注管理要員として高単価で提供することで、30年間稼いできた。

 プロジェクトが少数精鋭化すると、この伝統的営業方針が通用しなくなる。なぜなら、少数プロジェクトでは大仰なプロジェクト管理も外注管理も要らないからだ。チーフエンジニアがプロジェクトリーダーを兼任できるので、プロジェクト管理の専任要員には出番がない。そうなると、開発実務を担う外注要員からの外注マージンだけが稼ぎのネタとなるが、1案件ではたいした額にならない。かといって開発要員を外部に頼る限りは、受託案件も増やせない。

 どうすべきか。精鋭の開発者としてプロパーを育成する――、これが唯一の答えである。そして、プロジェクトが少数化してもいきなり受託案件が増えるわけではないので、要員を余分に抱えていては立ち行かない。必然的に、経営方針をこれまでの人海戦術による「売上総額増大主義」から、少数精鋭による「1人当たり売上額増大主義」に切り替えざるを得ない。

 なお繰り返しになるが、実装を合理化することの本質的な効果は「設計者自身で実装できること」にある。第三者への仕様の伝達コストがかからなくなることこそが肝心であって、実装を海外の安い労働力に頼るのは大間違いだ。ローコード開発技術を使いながらオフショアリングしているとしたら、設計専任と実装専任が分かれることになるので合理化の利点を生かせない。実際そのように進めて失敗した話をよく耳にするので、気をつけてほしい。

 ではこの変化に対応するために、個々のIT技術者はどのように身を処していけばいいのだろう。まず、ローコード開発技術により少数精鋭化したプロジェクトに受け入れられるには、以下の適性やスキルが求められることを知っておかねばならない。

  • 他人と良好な関係を作れる社会性
  • 簿記を含む業務知識
  • データモデリングのスキル
  • プログラミングのスキル

 まず、他人(ユーザー企業側の関係者)と信頼関係を築き、彼らから有用な情報を聞き出すための成熟した社会性やコミュニケーションスキルが欠かせない。また、対話の相手は業務のプロなので、業務知識がなければ話が通じない。そして前回記事でも述べたように、ローコード開発はデータモデルを核として進行するため、データベース(DB)設計をやれないようでは仕事にならない。さらに、ローコード開発は「ノンプログラミング」ではないので、必要に応じてプログラミングできるようでなければいけない。これらの素養を身につける必要がある。

 「そんなスーパーマンがどこにいるだろう」といった皮肉が聞こえてきそうだが、そのような技術者はローコード開発の世界には普通に存在する。案件の特性によって複数のローコード開発基盤から都度選択するツワモノさえいる。彼らはエンドユーザーと談笑しながらデータモデルをどんどん書いて、プロジェクトを成功させてゆく。精鋭であることを実績で示し、報酬が自然に増えてゆく。

 報酬といえば、日本でのIT技術者の給与の安さが話題になったことがある(「日本のソフトウェア技術者の生産性及び処遇の向上効果研究」。2014年のレポートである上に特定分野(ERP)に限った話だが、今の時点で中国よりも平均給与レベルが低い可能性が高い。実際のところ、業務システムに携わるIT技術者の給与レベルの低さは世界的に見て異常だ。なぜか。日本の業務システム開発の世界では、人海戦術方式における外注企業で働く技術者が圧倒的に多く、彼らの給与レベルが極めて低く設定されているからだ。

 何しろ30年間君臨してきた巨大エコシステムなので、人海戦術体制はまだまだ続くだろう。しかし、そこで働く技術者の報酬がこれ以上増えることは望めそうにない。報酬を増やしたければ、適性やスキルが厳しく問われるとしても人海戦術体制の外に出た方がいい。考えてみてほしい。例えば「10人で12カ月」だった案件が「3人で12カ月」で賄えるとしたら、技術者の契約単価を2倍にしても、ユーザー企業にとっては十分に魅力的な価格設定なのだ。これが、「一山いくらの(と侮られている)人海戦術体制」と「実力で勝負する少数精鋭体制」の差である。日本におけるIT技術者の給与レベルの問題は、「どこに自分をプロモートしてゆくか」という本人の選択問題の結果と考えた方がいい。

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