どうする新居選び? データセンターのスペックを総ざらい(後編) - (page 5)

細川涼子 (Dell Technologies)

2019-11-26 06:45

 この「データセンターファシリティスタンダード」は、これまで挙げてきたデータセンターのスペックのうち、建物の堅牢性、電源設備や空調設備の冗長性など、ファシリティの信頼性にかかわる重要な項目について、ティア1からティア4(ティア4が最高)のレベル付けを行ったものです。

 これは、米国の民間基準Uptime Instituteの「Tier」を日本向けにカスタマイズしたものになります(米国では日本より電力の信頼性が劣り、広大な土地であることから機器や部品の交換に時間がかかるため、「電力事情の悪い環境」に適した基準が作られています)。マンションでいえば「耐震等級」のような基準と考えたらよいでしょう。

 では、ティア4のデータセンターから選べばよいのか? と思われるかもしれませんが、信頼性(冗長性)の高さはコストにも当然はねてきます。データセンターの選び方において信頼性は最も重要な指標のひとつですが、他にも広さ(キャパシティ、拡張性)、コスト、アクセスなど他の要素もありますね。各種あるスペックのうち信頼性部分を確認する上での指標と考えるのがよいでしょう。

 レベルについてはティア3以上相当を目安にしているデータセンターが多く、ティア3、一部ティア4に相当……といった形でどのように基準に準拠しているのかを示しているものもあります(ちなみに、JDCCファシリティスタンダードはあくまで各事業者が考慮すべき基準、利用者との相互理解のための指標であり、第三者による認証や認定資格ではありません)。

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 川の見えるマンションを諦めきれない中野さん、自治体のウェブサイトでハザードマップを調べて確認してみると、マンションの立地は少し高台になっており、浸水リスクは低いことがわかりました。また、不動産会社に確認すると、上下水道やエレベーターの電源は非常時にも対応していることがわかり、なんとか彼女を説得できそうです。

 さて、引っ越し先のデータセンター選びもそろそろ終盤です。候補のデータセンターを挙げたら、自社の(1)現状踏襲の要件(2)移転を機に実現したい要件(3)あれば嬉しい要件について、満たしているか問い合わせましょう。候補が絞れたら内見、見学をするのもよいでしょう。

 次回は、引っ越し前に必ずやらなくてはいけない悩み事、「何を持っていく? 捨てる? 新居に合わせて買う?」のプランニングをお手伝いします。

細川涼子(ほそかわりょうこ)
Dell Technologies(EMCジャパン株式会社)ITXコンサルティング部
サーバー構築、データベースサポート職などを経て2006年EMCジャパン入社。ストレージ製品の導入を経て2009年より現職。プライベートクラウドの企画、災害対策システムの企画、データセンター移転の計画策定や実施支援を多く手掛ける。

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