米Hewlett Packard Enterprise(HPE)がクラウドから学んだことは「体験が重要」というもの――こう話すのは、同社でソフトウェア定義とクラウドグループ グローバルマーケティング担当バイスプレジデントを務めるPaul Miller氏だ。HPEはハードウェアベンダーながら、「3年後に全てをサービスとして提供する」と公言する。同氏にマルチクラウドの戦略を尋ねた。

Hewlett Packard Enterprise ソフトウェア定義 クラウドグループ グローバルマーケティング担当バイスプレジデントのPaul Miller氏
--ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの戦略はどのようなものか。
HPEのハイブリッドクラウドには、オンプレミスのクラウド、パブリックのクラウド、そして、エッジクラウドが含まれる。ソフトウェアスタックとしてはVMwareやRed Hatのスタック、SAPやOracleなどのベアメタルスタックなど、複数のソフトウェアスタックがあり、ハイブリッドの実装先とワークロードの2点で見ている。
マルチクラウドは、複数のパブリッククラウドを意味するが、HPEの戦略はクラウドとソフトウェアスタックの両方で選択肢を提供することだ。さらに、さまざまなソフトウェアスタックとクラウドで一貫性のある運用モデルを提供する。ここは競合優位性であり、競合他社は仮想化スタック、コンテナースタックなど、特定のものにフォーカスしているからだ。
例えば、DellがフォーカスしているのはVMwareスタックで、管理コントロールプレーンでは仮想化が中心だ。HPEはITインフラ管理の「OneView」でコンポーザブルファブリックを管理でき、人工知能(AI)を利用したオペレーションを実現する「InfoSight」でアナリティクスと管理を実現している。オープンなAPIを利用し、VMwareやRed HatのOpenShift、ServiceNow、Docker、Chef、Kubernetesなど30以上のパートナーとの深いレベルで統合できる。顧客は全てのワークロードに対して一貫性のある運用モデルを構築できる。OneViewでポリシーベースのテンプレートを用意しており、ユーザーはこれを利用してインフラ、ワークロードの管理を数分で設定できる。
このように、1つの技術にフォーカスするのではなく、全てのワークロード、全てのクラウドを管理するのがわれわれのアプローチだ。これを実現するために、オープンなアーキテクチャーを構築している。
--顧客のマルチクラウド移行をどのように支援するのか。
HPEは、「自社にとって適切なミックス(Right Mix)」をクラウドやオンプレミスを組み合わせて構築することが重要だと考えている。サービスの調達、アクセス管理などができるブローカーを利用して全体を見渡せるが、これに加えて「HPE Right Mix Advisor」サービスを展開する。
HPEのサービスチームは、これを利用してアプリケーション、インフラ、クラウドなどのさまざまなデータポイントにおける相関関係を理解し、その上で、「どこにワークロードを置くべきか」といったことを顧客と一緒に決める。リプラットフォーム(replatform)してパブリッククラウドに置く場合があれば、モダン化してオンプレミスで動かすことを推奨するかもしれない。われわれの経験が蓄積されているし、データポイントに基づいているので、偏見のない決定ができる。
GDPR(欧州の「一般データ保護規則」)など19種類の規制に対して順守をチェックできる「HPE Managed Cloud Controls」も提供する。また、「HPE Intelligent Data Platform」もある。あらゆるデータ、ワークロードのためのオープンプラットフォームであり、AI主導でデータを管理できる。“as-a-Service”として提供する。
これらの技術やツールは、ハイブリッドクラウドのコンポーザブルプラットフォームと位置付けている。セキュリティは“ゼロトラスト”として組み込んでおり、顧客はオープンに自動化できる。洞察を得ながらAIを利用したオペレーションが可能だ。ハイブリッドクラウドのコンポーザブルプラットフォームは、HPEの戦略の中核にあり、全てAPIを提供する。「HPE Synergy」「HPE Composable Rack」「HPE SimpliVity」「HPE Nimble Storage」などで実現できる。