もう一つの解決方法は、上司側です。要望をメンバーから言ってくれないと分からないのですが、「メンバーが発言しやすい環境を整える」ことです。
普段忙しく、ほぼ席にいなくて部下と話していない。メールも見ることができない、そんな状況になっていないでしょうか? 確かにこれではメンバーとしても「言えない」「言ってもちゃんと相手にしてくれない」になりやすいですね。
最近、週に1回、あるいは月に1回上司と部下が1対1で対話する“1on1ミーティング”を制度として導入する企業が増えています。まさにこれはメンバーが発言しやすい環境をつくることが目的の制度です。こうした場を活用して「発言しやすい環境づくり」をすることが上司の役割なのです。
お互い、目の前のことに精一杯となるだけでなく、「最近どう?」などと何でも話せる関係性を創り上げる。昔では当たり前だったかもしれないけれども、今では「制度」として導入されなければそういう会話ができないのは、もしかしたら、本来悲しいことなのかもしれません。
とはいえ、「何でも言って来い!」と言えるのは、「この人は何を言っても、何かしら対処してくれる」と相手に思われてこそ言える言葉です。そこまで関係性や実績が築き上げられていない状態では、ジャイアンの言葉と同じになります。
メンバーは「発言する勇気を持つ」、上司は「メンバーが発言しやすい環境を考えて整える」。この2つがかみ合うことで、初めて意見活発な組織が構築できるのです。
リモートワークを推進する人事の役割は
在宅勤務やリモートワークなどは、人事制度として取り扱われがちですが、実際影響を受けるのは、一緒に働いているチームのメンバーです。そこで、制度や仕組みは人事主管で各部と調整しながら作りつつ、実際の日々の運用の責任は各現場にお任せするのが成功のコツだと思います。
むしろ人事の役割は、チームのメンバー同士が「発言しやすい」環境をつくること。関係部署に行って、制度の目的をしっかり伝えつつ、ワークショップをするなどして、チーム内の関係性を円満にし、制度利用が促進するように働きかけましょう。
勘違いしてはならないのは、「制度を使ってもらう」のは人事の仕事ではありません。「制度を柔軟に使いやすいように修正する」ことが人事の仕事です。「ここが使いにくい」「こうしたらいいのではないか」という現場の意見を、人事こそ耳を傾ける必要があります。作りっぱなしでは誰にも利用されない制度になりがちです。社員の意見や状況に応じて修正、変更し、自社なりのものにすることが大事です。
リモートワークを題材に様々なことをお伝えしてきましたが、制度のつくり方や使い方については、リモートワークに限らずどのような制度においても適用することかもしれません。「発言を恐れずお互いにとにかく対話する」ということが、すべてにおいて大事だと改めて思います。
今回の連載は、初回で伝えた「駅で〇時間缶詰or行列」といった不毛な状態を無くしたいという想いから始まりました。同じ想いを持つみなさんが動かれて、それぞれの組織でリモートワークがもっと活用されるためのヒントになっていれば幸いです。