老舗の文具、オフィス家具メーカーであるプラス(港区)の社内カンパニーの一つで法人向け流通を事業とするジョインテックスカンパニー(ジョインテックス、港区、従業員数約500人)は、販売店向けオフィス用品の卸購買サービス「JOINTEX」を中心に、企業向けのオフィス用品通販サービスの「smartoffice」、介護施設向けのデリバリーサービス「スマート介護」、学校、幼保園向けの通販サービス「smartschool」を運営している。自社だけでなくパートナー製品も取り扱い、各地の営業拠点とも連携。ユーザーにはリピーターも多く、コミュニケーションに重きを置く“人がいる通販サイト”を標榜しているという。
運営するコンタクトセンターのシステムリプレースにあわせてクラウドベースのコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」を採用。仮想デスクトップサービス(DaaS)「Amazon Workspaces」と併用し、“持ち運べる”コンタクトセンターを実現したという。
情報システム部門主導で業務改革
同社は現在、ITを活用した業務改革に取り組んでいるという。
例えば、地方の販売店などの合弁会社という成り立ちで企業文化や情報システムの管理が拠点ごとにばらばらという課題に対し、拠点ごとのファイルサーバーをAmazon Web Services(AWS)上のストレージに統合。共有化したことでファイルの交換場所に留まらない、拠点間の情報交換場所としても機能しているという。
ほかにも、基幹システムをはじめとした主要システムをほぼAWS上に移行させるなど、変革を推進。デジタルトランスフォーメーション(DX)による社内イノベーションが進みつつあるという。取り組みは上層部にも評価され、DXを主導する情報システム部の名称はデジタルイノベーション推進部へ変更。マーケティング機能まで持つ部門へと進化を遂げていると説明する。
BCP対策の強化でCTIを刷新
デジタルイノベーション推進部 副部長を務める山口善生氏
その一環で同社は2019年5月、ECサイトのコンタクトセンターで活用するシステム基盤を再構築。Amazon ConnectとAmazon Workspacesの活用を開始している。ジョインテックスのデジタルイノベーション推進部で副部長を務める山口善生氏は、業務自体は問題なく行われていたが、センターで活用するコンピューター電話統合(CTI)システムのサポート終了が迫っていたと説明。
また、「コンタクトセンターはサービスの中核を担う。年々災害が甚大化するなか、経営課題として災害時の事業継続(BCP)対策を強化する必要があった」と狙いを語る。
同社のコンタクトセンターは本社のある東京の赤坂と蒲田に設置されており、座席数は合わせて80席、平均の着信件数は1日あたり1000件、発信件数は1150件という規模になるという。
山口氏は再構築にあたり「選択肢として一番妥当で安心なのは同じベンダーの新しいシステムに置き換えること。しかし、業務のイノベーションを考えると顧客の音声データを蓄積し、活用する仕組みなども考えるべき」と捉えていたという。新たなCTIシステムを検討、そのなかで発見したのがAmazon Connectだ。
当時は米国で発表されてから約2か月。ドキュメントもない状況だったという。米国に設置されていた開発用環境にアクセス、環境を構築したところ、「直感的にこれしかないという感触を得た」と振り返る。日本リージョンでのサービス展開は未定だったが、すぐ導入検討に入ったという。
品質確認に加え、既存製品のリプレース、既存のベンダーが提供するクラウド型CTI、SaaS、他のベンダーが提供する所有型やクラウド型のCTIをそれぞれ検証、比較検討。コストや社内の顧客関係管理(CRM)システムとの相性に加え「特にBCP性能と拡張性という部分を評価」(山口氏)し、Amazon Connectを選択したという。機能面と拡張性の部分では、同社のシステム基盤は基本的にAWSに移行していて、社内システムと相性が良かったことも大きかったという。