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写真で見る島根富士通の生産ライン--国内生産へのこだわりと強さの源泉を追う - 16/34

大河原克行

2019-12-07 07:00

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)のノートPCの生産拠点である島根富士通は、国内最大規模のPC生産拠点である。2019年9月には、同拠点として過去最大となる月間30万台を生産。しかもそのうちの97%が、1台ごとに仕様が異なるBTO(Build To Order)での生産だったという。消費増税前の駆け込みやWindows 7のサポート終了を迎え需要が増大する一方、IntelのCPU供給不足の問題もあり、生産量を増やしながら仕様に合わせた生産体制を確立するのは至難の業だったともいえる。だが、それにもかかわらず、過去最大の生産台数と97%というBTO比率を両立させることができたのは、強化されたサプライチェーン体制と国内生産だからこそ実現できた島根富士通の底力によるものだといっていい。今からちょうど30年前の1989年12月に設立し、1990年10月から操業した島根富士通を訪れ、その強さの源泉を追った。

 島根県出雲市にある島根富士通は、FCCL傘下のPC生産拠点だ。1990年1月に操業で、当時は「FM TOWNS」をはじめとするデスクトップPCの生産を行っていたが、1995年にはノートPCの生産に特化。2011年には、島根富士通が立地していた斐川町が、出雲市に編入したことで、同年から島根富士通で生産されたPCを「出雲モデル」の名称で展開している。2019年5月29日には、累計生産台数が4000万台に到達。世界最軽量をうたう698gの「LIFEBOOK UH-X/C3」をベースとした「4000万号機」特別モデルを非売品で製作している。天板には宍道湖の夕日をモチーフに、島根県のふるさと伝統工芸品に指定されている「八雲塗(やくもぬり)」が施されている。

 「当初は1日数百台の規模であったが、2019年9月には月間30万台を生産することができた。2019年5月には累計生産台数が4000万台を突破したが、これは1つの通過点である。卓越したものづくり力を追求し、さらに、ものづくり力を生かしたサービス企業への展開を進めていく」と、島根富士通 代表取締役社長の神門明氏は語る。

 島根富士通の特徴は、1台単位での混流生産が行える「柔軟性」、最短で中2日で製造する「迅速性」、人と機械の協調生産による「継続性」、人材定着によるスキルとノウハウ蓄積を実現した「スペシャリスト育成」の4点であると、神門氏は胸を張る。

 例えば、柔軟性と迅速性では、9月の月産30万台のうち、97%がBTOによる生産であり、月8000パターンの製品を生産したという。「一つの製品だけで、約2億通りの生産が可能である。注文を受けて、オーダーが確定してからプリント板を生産し、1台ずつ違うものを作る。しかも、受注してから、中2日間の製造リードタイムで納品できる。要望に素早く対応する体制が整っている」とする。

 多くのPCメーカーが中国の拠点で生産を行っているが、日本には船で輸送するため、それだけで1週間ほどの日数を要する。受注から納品まで10日~2週間かかるのはそのためだ。これを埋めるために標準モデルを見込み生産し、輸入する場合もあるが、ニーズに合致しない仕様だったり、最適な台数を用意できなかったりということも起こりがちであり、顧客やメーカーにとって適正な仕様や価格で導入・販売できないという問題が発生。結果として、利益を圧迫することにつながっている。

 島根富士通では、柔軟な生産体制と迅速な納品体制を実現することで、顧客が求める仕様のPCを短期間に納品。不要な在庫を生まない仕組みが出来上がっているのだ。

 また、継続性やスペシャリスト育成では、同社が掲げる「人と機械の協調生産」によって、人による変種変量への対応、継続的な改善の実現とともに、単純作業および人の能力では及ばない作業を機械に移管することにより、人と機械の長所を組み合わせた生産現場を確立。それによって進化を続けることができているという。また、海外工場の人材定着率は約69%と言われる一方で、島根富士通の人材定着率は98%と高く、それによって品質向上や生産性向上に向けた知恵が蓄積されたり、工夫が繰り返されたりすることで、継続的な改善が進みやすく、同時に高いスキルを持った作業者による生産が可能になっている。

 「10年前から自動化に取り組んできた。約10年前にはラインの作業者は33人だったが、現在は16人で生産しており、検査工程などの機械が得意とする作業は人から移管してきた。一方で、人材定着率が高いことから、ノウハウの蓄積や継続的な改善、スピードと質の向上を図ることができる」とする。

 島根富士通では、生産技術、品質、改善といった観点から、継続的な教育を実施しており、全従業員に対して年間就業時間の5%以上にあたる108時間を教育に充当しているという。これも社員のスキル向上に貢献している。

 一方で、スマートファクトリー化にも余念がない。

 基板生産ラインでは、生産品目を変更する段取り替えにおいて作業を効率化。部品の倉庫への入庫から基板への部品取り付けまでのデータによる管理に加えて、作業実績データを収集し、正確な在庫情報と照合しながら運用。適切な段取り替え指示を行い、生産性を30%向上。多品種少量生産に自動対応できるようにしている。

 「部品が切れる前に補充することができ、1日300回の段取り替えを効率化している」という。

 さらに、検査工程にはおいては一部で人工知能(AI)を活用。ケーブルの接続状況の検査に画像データを活用し、スピーカーやマイクの音質検査にもデータを生かしている。検査アルゴリズムをAIが生成して、これをもとに品質を判別している。また、組み立て工程では、作業者による目視検査に加えて、AIで生成したアルゴリズムをもとにしたロボットの外観検査も組み合わせて実施している。確実な検査と、検査品質の安定化、トレーサビリティーの強化につなげているという。

 その他、RFID(無線ICタグ)を使用した部品のピッキングも改善している。「ここでは、スピードと確実性が求められている現場において改善を図ることができた。これによって、BTOに柔軟に対応するとともに、精度を高めながらリードタイムを1秒でも短くすることができた」とする。

 こうした部品供給の仕組みが、異なる仕様のPC生産を下支えしており、これらがサプライチェーンとも連動することで、需要変動にも対応した部品調達と生産を可能にしている。なお、これらのスマートファクトリーの取り組みは、富士通のものづくりデジタルプレイス「COLMINA」として外販している。

 富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長の齋藤邦彰氏は、「島根富士通にはユニークな強みが芽生え、成果を出し始めている。他社は台湾設計・中国生産であるが、FCCLは国内設計と国内生産を強みとし、そこで差別化している。FCCLは日本向けPCを作るのが最も得意な会社である」とする。

 島根富士通の生産ラインの様子を写真で見てみよう。

デスクトップPC向け基板のはんだ付けにはディップ方式が用いられている。

デスクトップPC向け基板のはんだ付けにはディップ方式が用いられている。

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