2025年に向けてDXを推進するIT部門の役割

第7回 DX推進の際に企業がクラウド側の仕様に合わせる適用性

石橋正彦

2020-02-05 06:00

 2019年の現在は、デジタルトランスフォーメーション(DX)がIT部門の耳に入るようになった。定義や捉え方は企業によって異なるが、五輪特需や大型プロジェクトの活況が終わった先の2025年は、本格的なDXの時代が始まるであろう。しかし、期待されるDXは全社レベルで検討すべきビジネスの話か、IT部門が検討すべきITの話か――これまでのDXの前身に当たる方法論をもとに、2025年に想定される事象をシミュレーションし、その先のIT部門の年齢構成の変化も読み解きながら、DX時代のIT部門の姿を全8回の連載で占う。第1~4回はDXのガバナンス、第5~8回はDXのテクノロジーがテーマだ。

 第6回では、DXのテクノロジーとして「System of System(SoS)」と、Suica誕生の秘話を解説した。また、JR東日本では顧客からSuica利用の手数料を回収せず、他の鉄道会社からBtoB(対法人ビジネス)の手数料として回収していることを話した。今回の第7回では、DXを推進する際に、企業がクラウド側の仕様に合わせる適用性について解説する。第8回は社内システムのDX化を取り上げる。

オンプレミスであれば「モバイル/ビッグデータ/IoT」の話は聞いている

 第5回で触れたレクサス、第6回で触れたJR東日本のケーススタディーは、いずれも主にオンプレミスにおけるケーススタディーであった。これらが登場した当時、「モバイル/ビッグータ/IoT」などを利用したシステムを少なからず構築していたという読者もいるに違いない。

 こうしたオンプレミスによるケースは、問題なく今後も使われることだろう。ただ、現在から将来にわたるDXでは、いつビジネスが縮小気味になるのか予想が着かないものである。従来のオンプレミスのシステム構築であれば、「パッケージを直す」など、「業務側の要件」が絶対で、そのためには予算と工数を掛け、長い期間システム構築をしていた。

オンプレミスであれば「自由にシステム構築ができる」

 ただ、本稿で取り上げるような、「短期でビジネスサイド」の意向に合わせたシステム構築をクラウドなどで行うには、ある程度ビジネスサイドに、システムの制限事項や制約を納得してもらわなければならない。これは、パブリッククラウド(パッケージ)を利用する際に、クラウド側では、ほぼカスタマイズやアドオンができない仕様だからだ。クラウド側は、どの国、どのユーザーにも平等にAPIを提供し、サブスクリプションモデルで毎月、利用した分の課金をしている。

図16.パブリッククラウドを否定したIT部門(出典:丸紅ITソリューションズ、2020年1月)
図16.パブリッククラウドを否定したIT部門(出典:丸紅ITソリューションズ、2020年1月)

 図16では、国内のIT部門がこれまでパブリッククラウドを否定し、積極的に利用していなかった状況のイメージである。このような国内のIT部門は多いだろう。特にセキュリティやリスク面を考えると、“実績がないクラウド”を推奨できなかったIT部門があったはずである。

 2025年に向けてDXを推進するIT部門は、パブリッククラウドの仕様(要件や制約)をビジネスサイドに説明する必要がある。その例を以下に示す。

  • 「課金は毎月ですが、解約は解約入力後の1年後に適用されます」
  • 「システムにログインするには、専用のディレクトリ経由になります」
  • 「集中購買や値引きはありません。必ずユーザー課金となります」
  • 「『直す』『営業を呼び出す』ことはできません」
  • 「パブリッククラウドには全損のリスクがあります。業務停止を契約者に伝えるため(最後の通知のために)契約情報は、Excelや別媒体でオンプレミスに保存しておいてください」
図17.ビジネスサイドにパブリッククラウドの仕様を説明し、クラウド側にビジネスの要望を合わせる/適用させるイメージ(出典:丸紅ITソリューションズ、2020年1月)
図17.ビジネスサイドにパブリッククラウドの仕様を説明し、クラウド側にビジネスの要望を合わせる/適用させるイメージ(出典:丸紅ITソリューションズ、2020年1月)

 図17は、これまで強気であったビジネスサイドに対し、IT部門が従来のオンプレミスではなく、今回は短期開発を望むことからパブリッククラウド(パッケージ)を利用する際の制限、制約事項を説明しているイメージになる。ここではある程度、ビジネスに制限が入るが、開発も早く、撤退も早い。このような「クラウドへの適用性(※)」が必要である。

※適用性:adaptiveは、2014年当時ガートナーのアントアレン、ニールマクドナルドなどが「セキュリティの脅威に利用者が適用する」という方法論から始まった。

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