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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国政府の「外国製PC」排除は現実的か--“オールチャイナ”の可能性を考える

山谷剛史

2019-12-16 07:00

 英紙のFinancial Timesは、中国政府が政府関連機関における外国製コンピューターのハードウェアとソフトウェアを3年内に中国産へ置き換えると伝えた。報道によれば、2000万~3000万台のハードウェアを置き換える必要があり、2020年には設備全体の3割、2021年には8割、2022年には残りの2割を入れ替えるという。

 中国のメディアやブログも、同氏の報道を伝える形で紹介しているが、掲載された記事の多くが削除されている。

 過去の似たような事例としては、PC用の検閲ソフト「グリーンダム」を国民へ強制的にインストールさせようとした(失敗に終わった)ことが挙げられる。グリーンダム騒動は2009年の話になるが、当時は中国国内での検閲強化が目的だった。今回は米国の影響下から脱するということで、グリーンダムのときとは事情が違う。

 実際、中国製のPCから外国製のハードウェアやソフトウェアを駆逐できるのだろうか。できない理由を挙げるのは簡単なので、ここではあえて、どうやったらできるのかを考えてみる。

 まずソフトウェアだ。OSについては華為技術(ファーウェイ)の「鴻蒙(Harmony OS)」と阿里巴巴(アリババ)の「AliOS」がある。これらの独自OSはスマートフォンにも採用されている。Androidと互換性があるため、アプリのインストールも可能だ。Linuxには幾つかの国産ディストリビューションがある。その中でも、比較的規模の大きな「中標Linux」と「麒麟Linux」が12月に新企業を設立し、新たなディストリビューションをリリースするという。IoT専用のOSについても中国企業が開発をしている。

 オフィススイートは、日本でも流通している金山軟件(キングソフト)の「WPS Office」がある。写真編集ソフトについては、Adobe Photoshopからシェアを奪う形で「美図(ビューティープラス)」が普及している。

 加えて、ソフトウェアのクラウドサービス化が急激に進んでいる。スマートフォン向けでは、LINEやPayPayでおなじみの「ミニプログラム(あるいはミニアプリ、小程序)」が中国でいち早く普及している。例えば、「微信(WeChat)」には特に多くのミニプログラムが登録されているし、支付宝(アリペイ)や百度(バイドゥ)のアプリにも同様の機能がある。また、小米(シャオミ)やOPPO(オッポ)、Vivo(ビボ)といった中国メーカーのスマートフォンでも、メニュー画面からミニプログラムを呼び出せるようになっている。微信などの一部アプリには、PCで利用可能なものもある。そうしたノウハウが十分にあるため、政府端末に必要なアプリケーションを利用しやすい形でクラウド化することも難しくないはずだ。

 ハードウェアはどうだろうか。CPUに関しては、ファーウェイのスマートフォンに導入されたことで知られる「Kirin」がある。同社傘下の半導体メーカーであるHiSilicon Technologyが製造する。また、ファーウェイはサーバー向けCPUとしてARMベースの「Kunpeng」を提供している他、SSDやメモリーもサーバー用に自社で生産している。例えば、SSDについては、コントローラーチップを自社開発することでさらなる高速化を図っている。現在はサーバー向けの製品になっているが、スペックを落としたクライアント向けを作るのも難しくないだろう。

 こうして挙げてみると、中国製品だけでハードウェアとソフトウェアをそろえられそうだ。使い勝手に関しても、Linuxしかない10年前の状況と比べて、ITリテラシーが高くも低くもない一般的な中年・若年の公務員にも使えそうな状況が整っている。中国産への置き換えは不可能ではない。

 もっとも消費者にとっては別だ。変化が激しいと言われる中国において、「Windows 7」は世界平均よりも使われている。どうやら昔からのデスクトップ向けOSを使い続ける傾向があるようだ。ソフトウェアがあってのOSであり、政府が外国産ソフトウェアに禁止令を出すようなら、グリーンダムのときのようなハッカー中心の抵抗が起きるだろう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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