デジタルを生かせるか--金融庁の調査にみる地方銀行への期待

松岡功

2019-12-19 07:00

 本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回はITに関連する気になる動きとして、中小企業の地方銀行への期待とデジタル化の動きについて取り上げたい。

中小企業が地方銀行に期待するサービスとは

 金融庁が先頃公表した全国の中小企業を対象にした調査で、地方銀行に対して融資以外で販路拡大などの経営支援を求めている企業が8割超に上った。この大きな期待に対し、地銀はITやデジタル技術を活用して応えることができないか。今回はこの視点で話を進めたい。

 企業にとっては銀行のサービスというと、まず融資を受けるイメージが強いが、そのほかに、とりわけ中小企業にとって地銀から受けたいサービスはどのようなものか。金融庁が地銀や信用金庫などをメインバンクとする中小企業約3万社へ調査の依頼を行い、約3割から回答を得た。

 その中で、企業から最も要望の多かったサービスは、「取引先、販売先の紹介」で42%に上った。次いで「財務内容の改善支援」(29%)、「人材育成、従業員福祉」(21%)、「事業計画策定支援」(18%)などが続いた。

 一方、企業が過去1年間にメインバンクから提案された内容は、「資金繰りの相談、融資の提案」が最多の64%。それに対し、コンサルティングなどの「経営改善支援サービス」は27%にとどまり、多くの地銀は企業側のニーズに十分に対応できていない実態が浮き彫りになった。

 こうした調査結果から、筆者がとくに注目したのは、取引先、販売先の紹介や人材育成といった企業ニーズだ。これらには地銀ならではの地域ネットワークを基にITやデジタル技術を活用して、さまざまなマッチングの仕組みなどを提案することができるのではないか。

 ある地銀の最高情報責任者(CIO)に、地銀が現在置かれている状況を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

 「地銀は今、人口減少による資金需要の減少など経営環境が厳しさを増す中で、生産性向上が急務となっている。一方で、地銀として店舗網の維持も求められており、生産性向上と地域への責任や地域密着の強みを両立させていく必要がある。そうした中で、急速に進むデジタル化や異業種からの参入に対し、地銀として地域に密着しながらデータを駆使して、顧客に対する高い提案力が求められている」

 地銀のCIOとしての苦悩ぶりがうかがえるコメントだが、最後にあるように「顧客に対する高い提案力が求められている」ことは十分に認識しているようだ。

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